ホテルマンは3年で辞めました【38.初ナイト】 | SHOW-ROOM(やなだ しょういちの部屋)

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 無事にプレオープンが終わると、そのまま記念すべき開業日を迎えた。


ナイト勤務を経験した2人も我々日勤を終えた社員も、常にマネージャーがいてくれた事もあり特に問題なく、後はそれぞれ場数を踏んで様々な経験を積んで行くだけとなる。


マネージャーはオープン当日も帰宅せずそのままナイト勤務に入る為、チェックインが始まる15時まで休憩室で仮眠をとり、フロントで何かあれば浜田副支配人にお願いするという事で初日が始まった。 


予約状況は満室。


その初日にナイト勤務を任されたのは野川さんと藤田さんの24歳コンビで、藤田さんはビジネスホテルでフロントマンをしていた経験者だ。


入社してから知った事だが、基本的に男はナイト勤務が多く日勤は女子社員が中心となっている。


俺は念願のフロントに就けたのだが、また夜型となってしまったのであった。


初日からいきなりの満室という事で、ナイト勤務の2人は佐竹マネージャーがいたにせよ、22時頃まではバタバタでパニック状態だったと、朝の引き継ぎ時にヘロヘロになっていたと、女子社員達が言っていた。


 それを夕方聞いた俺はいよいよ初ナイト勤務だ。


パートナーはこの日早くも2回目のナイト勤務となる松田さんだ。


この夜も佐竹マネージャーが一緒にナイトに入ってくれた為、久々にいちばん年下として年上の社員に頼れる安心感はあった。


昨日に続き満室という状況で、やはり22時頃までは切れることなくチェックインがあり気が抜けない時間が長く、何度かホテル周辺の商業施設や電車の路線案内、空港までのリムジンバスの案内などいろいろ聞かれる事にもバタバタしてしまい、BARとは全く違った忙しさを感じていた。


日付けが変わり殆どの予約客のチェックインが終わると、頃合いを見て締め業務というのがある。


簡単にいえば、レジとデーターを照らし合わせて金銭の出納が合っているかのチェック業務で、これは日勤がその日のチェックアウトが終了した昼前後、ナイトは深夜に行われる業務である。


この業務で現金が1円でも合わなければ、閉店後の銀行員並みに大変な事となり、最初から全部調べる事になるのだった。


「よし!締めはOK!あとは大丈夫だな」と、マネージャーが言うと、すかさず松田さんが「はい、仮眠して来てください!」と。


「ヤナダ、大丈夫か?」


「はい、大丈夫です!」


マネージャーが地下の休憩室に下がると、俺達もすぐ裏のバックオフィスに引っ込み一息ついた。


「ヤナダ仮眠していいぞ。」


「あ、俺は眠くないので大丈夫ですよ。松田さんも起きててください(笑)」


「なに?(笑)俺は寝るからな!」


「いや、寝せませんから(笑)」


「いいよ!じゃあこれからかかって来た電話と、フロントに来た客の相手お前が全部やれよ。」


「じゃ、仮眠して来ますね(笑)」


「ダメだ!」


「松田さんO型ですか?」


「ああ、そうだよ。」


「やっぱり(笑)」


「ヤナダは?」


「俺も典型的なO型です(笑)」


「そうなんだぁ。」


「松田さんは幾つで結婚したんですか?」


「23だよ。」


「早いですね!」


「子供も4歳の男の子がいるよ。」


「そうなんですか、見えないですね。」


「若い?」


「はい、28に見えないですね(笑)」


「若いお姉ちゃんと付き合ってるからな。」


「えーっ!?」


〜つづく〜