「うん、辞めた方がいいよ。」
「そうですね・・・。」
「で、藤間さんと飲みに行ったコンパニオンは何で辞めちゃうの?」
「え?ヤナダさん聞いてません?」
「何を?」
「・・・そっかぁ、言っていいのかなぁ。」
「ん?何だよそれ・・・。」
「私から聞いたって言わないでくださいね(笑)」
「ああ、分かった。」
「て言うか私は加山さんや中村さん達から聞いたんですけど、新しく入って来た子は仕事中裏で藤間さんに電話番号聞かれたりするんですよ。」
「お前教えたのか?」
「私は上手く笑って誤魔化して教えてないですけど、藤間さんが仕事で必要だからみたいな事を言ってこられると、知らない子達は教えちゃうみたいで・・・。」
「そんなのに引っかかっちゃうんだ。」
「それである日、藤間さんが休みの日に誘ったコンパニオンを仕事が終わる時間に迎えに来て、KプラザホテルのBARに行くのがパターンらしいです。」
「ああ、藤間さんは元Kプラザホテルでバーテンダーやってたからな。」
「そうなんですか。」
「そこで酔わされちゃうの?」
「それは分からないですけど、結果的に部屋に泊まってしまうらしいです。」
「そっか。藤間さんの後輩バーテンダーに部屋取らせておくんだろうな。」
「そして妊娠しちゃって辞めていく子がいるって言ってました。」
「えーっ!マジか。」
「はい。だから藤間さんには絶対に電話番号教えたらダメよ!って、コンパニオンの中で言われてます。」
「いい人だと思っていたし、フロント志望の俺から見ても憧れるホテルマンの1人になっていただけにショックだなあ。」
「ヤナダさんフロント志望だったんですか。」
「そうだよ!フロントマンになりたくてホテルに就職したんだから。」
「へえ、ヤナダさんフロント似合いそう。」
「そうか?でもBARに配属っていうか、レストランバーの方に来ちゃったら、Hホテルではもうフロントには行けないらしいよ。」
「え?そうなんですか?じゃあどうするんですか?」
「多分そのうち他のホテルに行くよ。」
「えーっ?辞めちゃうんですか?」
「うん。でもお前は今すぐ辞めろ(笑)」
「そうか、ヤナダさんがいなくなるなら辞めようかな(笑)」
「ああ、お前みたいなお嬢さんがやるバイトじゃないよ。」
そして数日後、山田由紀子は本当に辞めたのだが、それはそれで複雑な気持ちになる俺だった。
〜つづく〜