エヴリシング・フロウズ
津村記久子
地味で小柄な中学三年生山田ヒロシの一年間
自分が中三だった頃とくらべて、
鬱屈としてなんにでもイライラしがちなのは同じ。
でも、ヒロシは周りの人間に内心毒づいたりツッコミを入れながらも
「まあそういう事情があるんだろうな」とクールに受け入れる。または受け流す
自分はもっといっぱいいっぱいで、
反射的にイライラや不安な気持ちを相手にぶつけていたように思う
他の登場人物も比較的大人びていて
中学生にしてすでに、お互いの見えない事情も「そっとしておく」というたしなみがある
中学三年生らしく
塾も受験も恋も文化祭もストーリーに出てくるが
他の津村記久子作品と同じく
暑苦しくなく、大騒ぎせず過ぎていく
だからといって、感情が表現されないわけではない
ひそかに恋する人の、どうでもいい小さなことまで眺めて知っていること
命のはかなさを知って、まず思うのは「好きな人に話しかけてみよう」ということ
一緒にいて居心地はいいが、多くは語らず多くは知らない友人のことを
相手は自分のことを友だと思っているのかと不安に思うこと
受験がはじまり、嫌でもどんどん進路が決まって行くのに
自分の中の具体的な方針はまったく見えてこなくて焦る気持ち
卒業し、別れを経験して
自分の中に空白が生まれたのを感じる気持ち
さりげない文章、短いセリフのなかに
みずみずしい感情がいくつも垣間見えて
私も中学三年生のころを何度も思い出しながら読みました
気持ちはいつもこんな
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