AZUR et MASA UEKI @乃木坂 西麻布に広がる能登の風景 | 日本中を食べ尽くす!!ミトミえもん食べ歩きブログ

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カルフォルニアの名門AZUR WINESプロデュースの店が西麻布に登場。招聘したシェフの名前と合わせて『AZUR et MASA UEKI (アズール エ マサ ウエキ)』としてオープン。ウェイティングスペースはワインカーヴを思わせるような作りで、ワイナリーの雰囲気を感じさせます。料理はシェフの出身である金沢、能登の食材を駆使して、素材が持つ様々な表情を引き出します。五味を意識した味わいに、食事をより豊かにしてくれる演出は、食仲間との食事会でも恋人とのデートでもあらゆるシチュエーションに満足感を与えてくれるでしょう。



料理には美味しいという絶対条件とともに、込められた”メッセージ”も楽しみたいもの。これは決してガストロノミーの特権ではなく、学生街にある定食屋やお腹いっぱい食べてほしいと大盛りメニューを並べているのも同じこと。これが本質的であればあるほど価値を感じるし、そうでない料理にはどうしても薄っぺらい印象がつきまとってしまいます。そういう視点で言えば、植木シェフのメッセージはとてもわかりやすく伝わってきます。

最初の一品がさっそくシェフの地元である能登の風景を西麻布に広げてくれます。まるでタコスのような一品だが、ここに故郷の食材が込められます。能登の伝統野菜である中島菜をドライパウダーにして作った生地、この上に紅心大根、七面鳥、スイートチリと重ねます。胸肉を使ってしっとり感を演出しつつ、皮の部分が香ばしさなどのパンチ力を加えます。これがクリスマスの時期ならさらに感慨深い料理だったでしょう。



ここからはメニューに沿ってご紹介。それぞれに素敵なネーミングがつけられ、その意図を探していく作業もまた面白い。

「幸いなる出会い」
ワイナリープロデュースらしいブドウの木を盆栽風にして登場。その身をアップルパイとして提供しております。その他、鱈の昆布締めで蕪を包み、青首鴨のコンフィを玉葱ドレッシングで、そして、能登の郷土料理という里芋と蛸の味噌煮込みをたこ焼き風に。チーズを混ぜることで、味噌と発酵の掛け算を。



「甘美なる憂愁」
スペシャリテの1つで、一皿に五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)を詰め込みます。フォアグラの旨味、それをキャラメリゼした甘味、たか海老にあてた塩味、ビターなチョコレートの苦味などを重ねてきます。フルーツの部分は季節によって変えるそうだが、今回は酸味の効いたルビーグレープフルーツを合わせます。これをあえて皿ではなく紙の上でその場で作り上げていく過程も一緒に作っているような錯覚をおこします。味が重なっていく光景を見せた方が、1つ1つの味わいを自覚できる狙いもあるのでしょう。 



「清爽譜」
真鴨、加能蟹、伝助大根。石川県の誇るブランド蟹とかが野菜の組み合わせ。1つ1つでも成立する出来栄えなのですが、重ねることで味に深みを作り出します。乱暴な高級食材の組み合わせなどではなく、大根にそれぞれの出汁が染み込むなどしっかり計算されたもの。しかも、大根の葉までスープに利用しているのは好感度が高い。



「清澄」
能登産のマッシュルームをつかった木の子のスープ。味わいを引き出す塩もまた能登の珠洲のもの。無形文化財にも登録される揚げ浜式製塩法で作り上げた塩で、その歴史は1000年にも及ぶと言われております。NHKの朝ドラの「まれ」を見ていた人は馴染みがあるかもしれません。能登の歴史を感じるのに十分なスープでございます。



「冬の海原」
氷見の寒ぶりのロースト。味付けに参加するのは焦がしバターといしる。石川県の奥能登で作られる魚醤でございます。発酵した独特な味わいが、冬の海原を泳いだ脂ののった鰤とバッチリ握手しております。能登の魅力がお皿ごとに伝わってきます。



「里山里海」
口直しは故郷の山と海の幸。能登産の大根を、フレッシュに、焼いて、煮てとテクスチャーを変えて提供してくれます。そしてこれらに合わせるのは海藻のバター。豊かな山と海の存在を知らせてくれるとともに、地元の人たちが食材とどう向き合ってきたかまで紹介してくれているかのようです。



「荒波を乗り越えて」
荒波とくれば魚介を想像したが登場したのは猪。なんでも能登半島を泳いで渡ったことが由来なのだそう。海を渡る猪達の姿を表現するかのように、昆布を器にして登場します。しかも、ちゃんと香りづけという意味も含まれているから素晴らしい。特に脂の部分の強さには目を見張るものがあり、藁焼きによって味わい深いものに仕上げております。やはり荒波の乗り越えてきただけに力強い猪なのかもしれませんね。



「情熱の赴くままに」
クリーミーなカチョカバロ。トリッパ、ツブ貝、セロリが脇をかため、柚子胡椒の味わいが強いアクセントになっております。



「涼雪」
デセールの1つめ。青リンゴとライムに蕪を重ねます。蕪ってのが珍しいですね。



「夢の彼方へ」
メインのデセール。ホワイトチョコレートのムースに、メレンゲをビスケットにしたものを重ねます。中には奈良漬けが入っており、この塩気が骨太な一品に仕上げます。甘いものが苦手な人でもきっと好まれることでしょう。