美しく生きるための言葉 | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

「恥じる」「粋に振る舞う」「みやびやかにする」
「曖昧にする」「受け入れる」「発散する」
「小さくする」「なる」「従う」「信じる」
「待つ」「癒やす」「簡素化する」「間をとる」
「結ぶ」「型をつくる」「一体化する」
「感じる」「頼る」「筋を通す」
「無になる」「清める」「一心不乱になる」
「秘する」「恐れる」「唱える」
「うつろう」「凝る」「繰り返す」「覚悟する」

こういう日本人が何気なく使ってきた言葉には、美しく生きるヒントが隠されている。

そう語るのは、気鋭の哲学者、小川仁志さん。

彼の書いた「日本人がよく使う何気ない言葉には、『美しい生き方のヒント』が隠されている。」長いタイトルの本だが、豊かな

内容だった。

 

パンデミックには、どうしようもないことがたくさんあった。
そんな中でも出来ることは、「美しく生きる」こと。

「美しく生きる」ということには、二つの意味がある。
一つは、素直に生きること。どうしようもないことも受け入れる。そのうえで、解決のためのタイミングをうかがう。

もう一つは、凛として生きるということ。
それを可能にするのは、なにごとも素直に受け入れるということ。日本人が培ってきた所作や知恵は、普段使っている何気ない言葉に隠されている。

小川さんの本では、美しく生きるための日本人の思想や教養を、30の言葉と共に紹介している。

例えば、

●日本人は、あえて「曖昧にする」ことで争いを避けるよう思考している。「あわい(間)」…物と物の間、時間的な間、人と人の間。あわいの関係性が境界を曖昧にして対立を避けてきた。

●ハレとケ。まじめにやるときとはじけるときのメリハリ。

●拡大するより「小さくする」。何かが欠けているところに美を見出す。想像をたくましくする。

●「粋」の3要素は、媚態、意気地、諦め。くっつきそうでくっつかない関係、異性にもたれかからない強い心、執着せず新しい関係を創る。

●機が熟するのを「待つ」。我執がなくなるまで「待つ」。

「する」より「なる」。

●「信じる」のは当てにすることではない。リスクを引き受けることだ。

 

美しく生きるための言葉を持ち続ける限り、生への喜びを諦めることはない。

天変地異の多い国で、いかにしなやかに生き延びるかを模索してきた。パンデミックの中でも「これまで通り」生きることは素晴らしい生き方だ。それは待つということであり、間を取るということであり、唱えるということに、ほかならない。

 

※小川仁志(ひとし)。哲学者・山口大学国際総合科学部教授。
1970年生まれ。商社、市役所勤務、フリーターを経た異色の哲学者。

京都市出身。京都大学法学部卒業。名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。専門は公共哲学・政治哲学。
「哲学カフェ」を主宰するなど、市民のための哲学を実践している。