話が弾まないのだ。食べることに夢中で。
富山市岩瀬にある蕎麦屋「口岩」。
予約は、インスタのDMのみ。ようやく予約が取れた。
富山の岩瀬は、かつて北前船で栄えた港町。
銘酒“満寿泉”の酒蔵「桝田酒造店」がある場所として有名。
その桝田酒造がこの岩瀬を盛り上げたいと街づくりをされ、古民家をリノベーションしたレストランが次々オープンしている、
「口岩」は、富山県朝日町で、2009年4月27日開業。
去年9月8日に、朝日町から岩瀬に移転したばかり。
店主は口岩倫彦さん。一途、一本気。蕎麦に実直に向き合う男。
店の入り口に置かれた長机。アラスカの一木作り。
入るやいなや圧倒される。
看板も暖簾もない。
「蕎麦屋に来たら、まず蕎麦からでしょう」とのたまう。
いきなりの蕎麦2皿。
つなぎ一割の「九一そば」。
二八では小麦が残るし、十割では時期によって、
麺にした時切れてしまう。だから「九一」なのだと。
大きな釜で蕎麦を茹で、井戸水で締める。
新鮮な蕎麦の実を真空保存したものを使う。
その挽き方や太さまで、細部まで徹底してこだわり抜いている。
探究心と経験に裏打ちされた美味しさ。
そば刺身!?
切り幅を変えることで味わいの違いを感じさせる。
ややしっかりめの噛みごたえ。
よく噛むことで、香りも甘味も引き出される。
締めの「出汁蕎麦」。心憎いまでの出汁。
名付けて「大人のハッピーセット」。
ホタルイカ、南蛮漬け、蕎麦つゆに漬け込んだ低温調理の鴨ロース、焼き味噌、醤油豆、おから、ワサビ和え、蒲鉾(鈴廣)
店のドレスコードは「日本酒を飲むこと」。
口岩氏は、出せない日本酒はないと豪語。
十四代も飛露喜もフツーにある。
日本酒進む酒肴揃い。
ボクの大好きな「出し巻」も出て来た!
この蕎麦の実が…
スペシャリテと言える一品。
まずは目の前で穀物専用のグラインダーでそばの実を挽く。
さらに、鍋で練り上げる。
火を入れると徐々に粘度を増していき、粘りを帯びてくる。
出来立ての湯気の上がるそばがき!
粗びきの食感と、粘り気の妙味が素晴らしい。
カラスミの粉をまぶしていただくと美味い。
そばがきの素揚げも。粗びきだから素揚げに出来る。
表面は香ばしく、中はふわふわ。対比が絶妙。
朝日町の山林に入って、口岩氏自ら採取した山菜たち。
ぶっといアスパラは、朝日町の特別ルートから入手。
素焼きと天ぷらでいただいたが、スイカ並みの糖度。
ふきのとうの天ぷら。
唯一無二の蕎麦ショー。
完璧に打ちのめされた。
アナウンサーなのに、
この感動を表現することばが見つからない歯痒さを覚える。
最後に口岩氏はこう言う。
「うちはフツーの蕎麦屋ですから」。
これが蕎麦屋の普通になってほしいという真意がある。
参りました。