論語知らずの論語塾86~孔子は例えがうまい | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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孔子の弟子たちは質問が好きだ。

弟子の理解度に応じて、孔子は懇切丁寧にわかりやすく答えている。

中でも、樊遅(はんち)は質問魔だということは、以前にも紹介したが、

孫のように若く素直な樊遅を孔子は可愛がったようだ。

孔子は散歩には樊遅を連れ歩き、出かける際には樊遅に馬車の手綱をとらせたという。

 

「仁ってなんですか?」と素朴に質問する樊遅に、孔子は「人を愛することだ」と答える。

また樊遅が、知とはどういうことかと質問すると、孔子は、「人を知ることだ」と答えられた。

だが、「人を知る」ということの真意が理解できなかったらしい顔つきの樊遅を見て、

直きを挙げて諸を枉れるに錯けば、能く枉れる者をして直からしむと言った。

「まっすぐな板を取り上げて、曲がりくねった材木の上に載せておくと、いつの間にか、曲った材木が真っ直ぐになってしまうということがあるが、このようにすることが知である」と説明したのだ。

素直で正直な人間を、ひねくれて誠実とは言えない人間の上に登用すると、ひねくれた人間も素直になってしまうという例えに材木を持ち出したのだ。良貨は悪貨を駆逐するということだ。

安岡さんが材木問屋に呼ばれて講演したとき、この章句の話をしたら、ずいぶんと喜ばれたそうだ。