千葉市図書館音訳研修会の講師をしてきた。
千葉市の中央図書館情報資料課で働く大川和彦さんに
依頼された。大川さんは、ボクのイベントにも、よく足を運んでくれる。
大川さんの頼み事は、いつも快諾しかない。
日本視覚障害者団体連合のHPによると、
音訳ボランティアとは、視覚に障害のある方のために、活字で書かれている書籍や雑誌、新聞などの内容を“音声にして伝える”ボランティア。
「音訳」と「朗読」とは目的が違う。
「朗読」は、読み手の解釈で感情を込めて読んだり内容を読み変えたりして、作品として仕上がったものを聞き手が鑑賞する。
「音訳」は、聞き手(視覚障害者)が情報を得るために利用するものなので、内容が正しく伝わるように、書いてあることを書いてある通りに読まなければならない。そのため、音訳ボランティアは視覚に障害のある方の「目の代わり」となって、情報を声で伝えることが大切になる。
音訳ボランティアは、音訳だけでなく、音訳されたものを校正したり、音声データを編集したりと、様々な活動を行っている。
今回のテーマは「聴きやすい声 伝わりやすい声」。
「いい声」とは何か、参加者の皆さんに聞いてみた。十人十色、いろんな答えが返ってきた。
「思わず聞き入ってしまう声。焼き芋、さお竹など物売りの声」
「抑揚のある響く声」
「心地よくいつまでも聞いていられる声」
「内容がはっきりわかる声」
「聴き手が疲れない声」
「明瞭な声」
「発音発声がはっきりしている声」
「不快にならない声」
「安心感やその人の心のありようが伝わる声」
「立て板に水ではなく、耳に温かく響く声」
「言葉の意味だけでなく気持ちが入っている声」
「高すぎず低すぎず落ち着いた声」
「声を意識しない声」
なるほど、なるほど。とても参考になった。
その上で、いい声とは何かと聞いたにも関わらず、
ボクは「声にいい悪いはない」と言った。
「あるとすれば届く声、伝わる声」
それは、本気の声。
目の前の人に全身全霊で向き合う声。
声高ではなく、穏やかに温かく包み込むように。
その人の喜びを倍に哀しみを半分にするように寄り添う声。
ボクをこの道に導いてくれた中西龍さんのような声。
声は人生を変える力を持っている。
声は「ことば」を運ぶ道。
その道に、どんなことばを乗せたらいいのか、
考えながら声を出したらいい。
そのことばを聴いた人の未来を作るのだから。