朝ドラ『カムカムエヴリバディ』、これまでの伏線や謎が、しだいに回収されつつある。
三人のヒロインが必要だったことも、わかってきた。
100年にわたる物語は、
3世代の人生を描き、主人公3人がリレー式でバトンをつなぐ。
初代の主人公・安子は戦前、2代目のるいは戦中生まれだが、ひなたは戦争を知らない世代。物語は平成に突入し、何気ない日常が紡がれていく。ささいなことに右往左往したり、流されたり…。
平穏な日常を生きる主人公。なのに目が離せないのは、物語の随所に安子やるいの物語とのつながりが見え隠れするからだろう。
ひなたの明るい物語は、孤独な子ども時代を送った母るいの続編で、さらには祖母安子の過酷な戦後のエピローグにあたる。
平凡に見える人生に潜む、壮絶で劇的な軌跡。
昨日の放送を、脚本の藤本有紀さんは、「岡山の奇跡」と呼んでいるそうだ。8月15日の終戦の日、お盆の岡山の一日に起きた奇跡が描かれる。
ひなた(川栄李奈)が、るい(深津絵里)の部屋で昔の英語講座のテキストを読んでいると、昔のラジオから玉音放送の英語版が聴こえてくる。それを読んでいたのは英語講座の初代担当の平川唯一(さだまさし)だった。ひなたは窓の外にひょっこり現れた平川と語り合う。
実は、平川は岡山出身で、NHKに入局し、終戦のとき、実際に玉音放送を英訳していた。この難しい内容を英訳するには翻訳によって伝わる意味合いが変わるもので、慎重を期したことであろう。
戦後、平川はマッカーサーの日本に向けた第一声も放送するための放送要員第一号としてNHKから派遣された。
平川唯一という人物が戦後の日本とアメリカの関係に関わってきた人物だったことを知ると、『カムカムエヴリバディ』の“ラジオ英会話”の意味がまた違って見えてくる。
るいは、母の安子(上白石萌音)がよく行っていた神社にお参りに行く。すると、そこに父の稔(松村北斗)が現れる。稔は、るいに向かって「どこの国とも自由に行き来出来る。どこの国の音楽でも自由に聞ける。自由に演奏出来る。るい…おまえは、そんな世界を生きとるよ」と優しい笑みを浮かべながら述懐する。
まさに「奇跡」。世の中には理屈では説明できない不思議な出来事がある。だから、平川や稔は、幻でも幽霊でもない。生きている者の想像力が生み出したもの。会いたい人への強烈な思いが亡くなった人を蘇らせた。
ひなたは平川とはまったく接点がなく、平川を知らずに会話している。安子とるいが暮らした部屋がタイムマシンになって、ひなたが過去にタイムスリップしたようだった。
るいの場合は、机の中から取り出した稔と安子が使っていた辞書が魔法の力を発揮したようだ。
100年のファミリーストーリーの結末はどうなるのか…。
最終回の4月8日まで目が離せない。