瀬戸内寂聴さんが、世を去る3ケ月前、秘書の瀬尾まなほさんを相手に語ったことばをまとめた本を読んだ。
改めて、示唆に富んだことばを教えてもらえる寂聴さんの存在の大きさを思う。もう新たなことばは聞けないが、寂聴さんの遺したことばを何度も何度も反すうして噛みしめていきたい。
本の中から特に印象に残ったことばを紹介する。
●見返りを求めるのは「渇愛」、求めないのは「慈悲」。
本当に好きなら「あげっぱなし、与えっぱなし」。
慈悲の「慈」とは楽を与え、「悲」は苦しみを抜き去ること。
●「和顔施」で人に接する。
にこやかな笑顔を心がける。笑顔は0円。一番安くていいもの。
●「忘己利他」(最澄のことば)己を忘れ他を利するは慈悲の極みなり。人を思いやれば、自分も幸せになれる。
●「らしさ」より「だから」。
女らしく、妻らしく、あなたらしく…らしさは世間の価値観を押し付け、世俗の道徳観がプレッシャーを与える。「あなただから」「自分だから」という価値観でいい。思うがまま、やりたいことに情熱を持って取り組んだらいい。
●「なんか」でなく「こそは」。
「私なんか」と自己卑下するのは、自分に失礼。他人と自分を比べている暇があったら「私こそは」と思って生きるべき。
●人の言うことに耳を貸さない。
他人の言うことは、全部いいかげんだと思って聞き流せばいい。
やきもちやおだてから生じたことがほとんどだから。
●無常。一つとして不変のものはない。
悪いことがあっても変わる。いいことがあっても変わる。
だから、悪いことがあっても絶望してはいけないし、いいことがあっても有頂天になってはいけない。
●寂聴の意味。
「寂」は、煩悩が収まった静かな心の状態。
「聴」は、森羅万象のあらゆる音を聴くこと。
寂庵のご本尊は観音さま。音を観ると書く。
観世音菩薩は、世の中の悩める人々が発する音声を観ずる、救いを求める声を聴いて救済する菩薩。音を観ずるのは仏教の基本。