「村上さんは、直球の人やからね~」
そう、高木克美さんは言い放った。
京都芸術大学教授で、和太鼓教育センター所長の高木克美(よしみ)さん。自らも和太鼓奏者である。
14、5年ほど前に、京都のホテルの喫茶室で会うなり、公表はしないでと念押しした上で、自分の命に関わる病気のことを打ち明けた。
なぜ、そんな大事なことを初対面のボクにと言ったのかと改めて問うた。それが冒頭の「直球の人」発言。
ズバリと直球で切り込んでくるムラカミに、隠し事はしない方がいいと思ったという。表沙汰にはしないことを念押しした上で、そのことをボクが踏まえて聞くと、インタビューの内容が変わってくると考えたという。その潔さ、想いの深さに感嘆したものだ。
彼女の奏でる太鼓にも潔さ、想いの深さ、魂の躍動がある。
高木さんが、ずっと大切にしていることばがある。
「晴れてよし曇りてもよし富士の山 もとの姿は変らざりけり」
幕臣、山岡鉄舟が宮中に仕えていた頃に詠んだ歌である。
中学高校時代、陸上競技に明け暮れていたころ、陰になり日向になり支えてくれた佐々木博隆先生が教えてくれたことば。
無私無欲の清廉な生き方を貫き通した鉄舟も、徳川家に仕える身でありながら明治天皇の臣下となったということで、陰口を叩かれることもあったという。
自らすすんでの宮仕えではないにせよ、真摯に職務を全うしていたところへのいわれのない誹謗中傷である。
さすがの鉄舟も言うに言われぬ胸の内があったにちがいない。泰然自若とした境地に達した鉄舟の生き方に学ぶものは多い。
大病をしたときも、不変の想いを持てたのは、この言葉の力が大きい。
そして、変わらぬ想いで支えてくれている人の存在に気づかせてくれた言葉でもある。
高木克美さんの3つの縁を聴く、シャナナTV『縁たびゅう』。
最初の配信は、11月1日(月)からの予定。
11:30~と20:30~の毎日2回配信。
翌週からは、YouTubeで、いつでもどこでも見られる。