関西弁で「かなん」いうことば。標準語に訳しにくい。
「いっつもギリギリに注文来るさかい、かなんで」
完全に困っているというニュアンスでもない。しかたないけど、相手の顔を立ててなんとかするという感じが含まれている。
「あのひと、てんごう(冗談)ばかっり言わはるさかい、かなん」
これも嫌だと言ってるわけではない。どこかに喜んでいる節がある。
そういう意味で、和久傳の大女将、桑村綾さんは、かなん女(ひと)だ。
「女将と呼べば1000円の罰金」と常々おっしゃっているが、大女将の今は、2000円だそうな。
和久傳名物のレンコン菓子「西湖(せいこ)」を、手土産に持参された。
手渡すとき、「はい、まつだ」と言われたので、キョトンとしていると、
「まつだといえば、せいこ」と涼しい顔で、ギャグをかます人なのだ。
京丹後から、イケズだらけの京都に出てきて、一代を築き上げた人だけに、「かなん」ところがなければやっていけないのだ。
社長を娘に譲ったあとも、娘から「近づいたら火傷する人」と言われながら、妥協を許さず、経営に携わっている。
だが、気配りの人でもある。
いちばんの気配りは、京丹後の人々に向けられる。
和久傳発祥の地に、8000坪の土地を購入し、そこに苗木30000本を植え、森を作った。植物生態学者の宮脇昭さんに「飛び込み」で協力を依頼した。物販の製造工場やレストランも作り、地域経済活性化の一翼を担っている。
その森の一角に、安野光雅さんの美術館をオープンさせた。建設は、安藤忠雄さんに依頼した。2人の巨匠に対しても「こわいもんなし」。
あれこれ注文を出したが「かなん」と言わしめ実現にこぎつけた。
ピンチが来るとワクワクするという綾さん。
苦難にまさる教師なしという綾さん。
現状に満足することはない。
「傘寿とご紹介していいですか?」
「なんのこと?はたちのこと?」
ほんまに、どこまでも「かなん人」や。
桑村綾さんの3つの縁を聴く、シャナナTV『縁たびゅう』。
最初の配信は、5月3日(月)からの予定。
11:30~と20:30~の毎日2回配信。
翌週からは、YouTubeで、いつでもどこでも見られる。