NHK大河ドラマ『青天を衝け』が始まった。
8年ぶりに初回20%を記録。好スタートを切った。
躍動感あり、スケール感あり、印象に残るセリフあり、
見応えがあった。
主人公、渋沢栄一は、日本近代化の激動期に、
農民、幕臣、新政府官僚、実業家と立場を変えながら、
現代に至る日本経済の礎を築いた人物だ。
まるでジェットコースターのような人生を送りながら、裏表なく、
泥臭く生き抜くしぶとさがあった人だ。
若いころの栄一は、
家業を手伝い藍玉を売るために各地に旅をしていた。
旅の最中、険しい信州の山あいで読んだ
漢詩の一節『勢衝青天攘臂躋 気穿白雲唾手征』(青空をつきさす勢いで肘をまくって登り、白雲をつきぬける気力で手に唾して進む)から、
『青天を衝け』というタイトルになった。
まさに尋常ではない勢いを持って死ぬまで生き抜いたといえる。
そういう彼の人生観が、現代の我々に示唆を与えてくれそうだ。
舞台は、武蔵国血洗島村(いまの埼玉県深谷市)の
藍染の原料となる藍玉作りと養蚕を手掛ける農家。
広大なオープンセットで、登場人物たちの伸びやかさがよく出ている。
ドローンカメラが映し出す緑豊かな農村風景にも惹き付けられる。
農民たちは楽しげに働き、若者たちは伸び伸び未来を語らう。
父も母も、温かく栄一を見守る。
母のゑいが、幼い栄一に言って聞かせることばがいい。
そのことばが、後の栄一の骨格を作ったと思わせられる。
「あんたが嬉しいだけじゃなくて、みんなが嬉しいのが一番だで」
「人は生まれたそのときから一人でないんだ。いろんなものと繋がってんだよ。それをここの奥底だってわかってんだよ」と胸を指しながら語る。
栄一役の吉沢亮さんは、こう語る。
「あたりまえのことがあたりまえでなくなっても、あたりまえを作っていくのが栄一。それが栄一の柔軟さ。人の言葉をうのみにせず、本質を見抜く力があったと思う」
無理難題のどんな状況に置かれても、「生き抜く」ことを教えてくれる
渋沢栄一の生き方を描いたドラマは、混迷の今の時代に必要なものだといえる。