さだまさしさんが推薦のことばを書いている。
「日本人の魂がここにある。日本人全てに読んでほしい、心豊かな現代の『五輪書』です」
春日大社の権宮司だった岡本彰夫さんの文章に惹きこまれる。
奈良の悠久の「祈り」を写し取ることの出来る保山耕一さんの写真に惹き寄せられる。
あえて「こんな時代」といおう。「こんな時代」になってしまったからこそ、
日本人の眠っている感性を呼び覚まそうということが書かれている。
「誇り」「しきたり」「祖先」「ふるさと」「他人」を大切にすれば、いまの時代が生きやすくなるはずだ。
食料自給率を向上させること。人間の驕りを増長させないこと。
120%の欲望を追求しないこと。天地自然を敬愛すること。
8割の幸せに甘んじる努力をすること。
伝承やしきたりには知恵と工夫がある。
我々が生きていく上で、常に「備え」と「構え」が必要だ。
奈良(南都)には悲願がある。
それは、神や仏に最高の礼を尽くす時代に回帰すること。
上へ上と行くのでなく奥へ奥へと進むべし。
さださんは、さらに感想を述べている。
「岡本先生の柔らかな語り口で市井に生きるささやかな人々の、生活を通した心の豊かさが温かなエピソードと共に描かれていますが、偉大な人は市井に潜んでいる、ということが、実はこの国の文化の奥行きなのだと気づかされます。
また、懸命に一途に己の道を歩んで生きた人のみが到達できる境地『矜恃』の深み凄みこそが究極の日本の「魂」だと教わります。
『みかえりのない心、計算の無い心で徳を積めば、必ず運は開けてくるんや』という言葉には、永年春日大社にお勤めになった名神主の岡本先生らしい、宗教家としての『祈り』と小さな人生を懸命に生きる人への『エール』を感じて嬉しくなります。
『土を捨て土を汚す現代人は土にひれ伏さねばならん』という言葉に、謙虚に生きる為の心構えの基本が示されています。
これほど幾度も幾度も深く頷きながら読んだ本は人生で初めてです。どうぞ幾度も幾度も頷きながら繰り返しお読み下さい」
ボクも、幾度も幾度も深く頷きながら読んだ。
岡本さんは神職を辞して数年。いま66歳。
岡本さんの祖母は「人の智恵の出盛りは七十過ぎてから」と言っていた。「いつまでも必要と思われる人生」を送りたいと思っている。
まったく同感である。