NHK文化センターの講座『ことばの取扱い説明書』。
受講生の一人、井上美子さんは、歌声運動に関わっている。
その自慢の声を披露する機会もない。満足に練習も出来ない。
そういう心境を「うたごえ新聞」に寄稿したそうだ。
その一部を紹介。
「コロナによって、会うことを止められ、おしゃべりを止められ、歌うことを止められた。必要最低限のことばしか発しない「ギクシャク」に疲れ果て、NHKの講座に通い始めた。長田弘さんの『最初の質問』に受講生が日常を振り返りながら答える。その答えに村上さんが更に踏み込んでくれて、言葉がどんどん膨らむ。話ながら、言葉のカウンセリングを受けているよう。今まで深く考えなかった言葉の世界に出会えることが嬉しい。手っ取り早く用件のみになりがちな今、一つ一つの言葉をもっと大事にしたい、言葉を鍛えたいと願う」
嬉しい感想だ。そんな風に受け止めてもらえて講師冥利に尽きる。
さて、その『最初の質問』ワーク。
●あなたにとって「わたしたち」とは誰ですか?
地球みんな。わたしと同じ方向を見ている人。この場にいるみんな。
一緒に歌う仲間。理解出来る同志。みんなごとに出来る人たち。
●何歳のときの自分が好きですか?
28歳。初めて九州を出て金沢に住んだ。新鮮な感動。
小2。その頃、可愛くて素直。
小5。悶えていた自分をいまなら許せる。
小6。その時の自分にエール送りたい。
79歳のいま。いつも「いま」がいちばん。
●「世界」ということばで思い描く風景は?
ピカソの「ゲルニカ」。国境なき医師団。中東の子どもたち。
夜明け前の空。半径50センチの自分という世界。
ここには、ギクシャクはない。違和感もない。
あるのは、一人一人の感性。感性を育むことば。
(感染対策バッチリ)