文化放送で、「日曜はがんばらない」の収録。
玄関で検温を受けてスタジオに。
スタジオには、アクリル板で仕切りが設けられ、飛沫防止措置がとられている。透明とはいえ、壁ごしの会話をしている感が否めない。
ゲストに生命誌研究館名誉館長の中村桂子さんをお迎えした。
1936(昭和11)年1月1日生まれの84歳。
グレイヘアーの似合うおしゃれな姿からは、実年齢が信じられない。肌もつやつや、話し方もチャーミング。ガーデニングもやれば、テニスやピアノもこなす。
大阪・高槻市にある「JT生命誌研究館」の館長を、3月いっぱいで退任したばかり。東京の自宅と大阪を新幹線自由席で、毎週往復しながら、副館長時代も含めて27年間務めあげた。
生命誌とは、「生命の物語」。生き物の38億年の歴史の繋がりの中で、人間を捉え直す。「人間も生き物」という見方をすれば、現代社会の問題点が浮かび上がる。
学校で習う歴史は、歴史上の人物が中心だ。だが、その時代には農民も漁民も、女性も子どももいた。人間の生産活動の場である田畑や海にもさまざまな命が息づいていた。
時間的出来事の中のほんの一部分を抜き出すのではなく、信長や秀吉もバクテリアも同じ仲間として捉えたい。地球に生きる一個の生命体という意味では同じだから。
人間を含む生命全体の広く長い歩みを記録する「歴史物語」という意味で、中村さんが「生命〝誌〟」と命名した。
この道に入ったのは、大学生の時、DNAの二重らせん模型を見たのがきっっかけだ。アメリカ映画で、オードリーヘップバーンが螺旋階段を降りてくるシーンを見て憧れた。同じ螺旋形の美しいものが自分の身体にあるとわかり嬉しくなった。
最近、生物学では「高等生物」「下等生物」という言い方はしない。アリとライオンを比べてどちらが優れているかと言っても何の意味もない。
アリは自分の体の何倍もの餌を運ぶことができるが、ライオンにはできない。比べ方によってはアリの方がすごい。
生きものに優劣はなく、それぞれに生きているということ。人間もまた生命の歴史の中にいるのに、「人間は生物界の外側にいる」と思ってしまっている。それを表す言葉が「地球にやさしく」。この言葉は生物界を上から見た目線で、中から見たら「やさしくしていただかないと生きていけない」となる。中村さんは、これを「中から目線」と呼ぶ。
「人間は上にいるのではない」「人間は生きものの中にいる」という感覚を持ちながら生き方を考えるべきだというのだ。
4月から「日曜はがんばらない」は、早朝6時20分からに時間帯が変わっている。
中村さんご出演の回は、4月19日放送予定。