明智光秀が天海になったという説は、よく聞く話だが、
光秀は死なず、天海となって戦国時代の幕引きに一役買ったという
ストーリーに重きを置く小説に、初めてお目にかかった。
早乙女貢さんは、テンポよく小気味よく筆を進めていく。
巧みに、光秀を天海に変身させていく。
この小説では、比叡山が重要な場となる。
明智城落城後、浪々の身となった光秀は比叡山で、修養に務める。
比叡山焼き討ちのとき、信長の家臣として、耐えに耐える。
本能寺の変後、秀吉軍に追い詰められたが、比叡山に身を隠す。
光秀の家臣、斎藤利三の娘お福は、徳川家光の乳母となるが、そのお福が足しげく比叡山に通い、天海に会う。
比叡山には、「慶長20年光秀」と記した石灯篭が現存する。
天海は、関東の天台宗の本山として、上野寛永寺を開くが、
ここは東叡山と呼ばれる。
大坂冬の陣夏の陣にも参加し、豊臣家の滅亡を見届ける。
そして、徳川三代につかえ、百十八歳の天寿を全うする。
自らの手で天下泰平を実現したいという光秀の執念が、
天海に乗り移ったかのようだ。
想像をたくましくしながら歴史ロマンを楽しめる小説だ。
若き日の光秀を中心に描くNHK大河ドラマ『麒麟が来る』が、
いよいよ19日スタートする。楽しみだ。
(天海 明智光秀)