上野千鶴子さんの東大入学式での祝辞が話題になっている。
上野さんといえば、東大名誉教授で、日本を代表するフェミニスト、
女性学やジェンダー研究の第一人者だ。
上野さんに、一度だけお目にかかり名刺交換したことがあるが、
舌鋒鋭くとりつくしまのない人ではなく、とても物腰の柔らかい人だった。12日の祝辞でも、穏やかに新入生一人一人に語り掛けるように、
とても大切なメッセージを述べた。
祝辞の冒頭で、具体的に男女の合格率の差をあげながら、去年発覚した東京医科大学の入試での女子差別を取り上げた。
さらに「息子は大学まで、娘は短大まで」という親の意識にも触れ、「社会に出れば、もっとあからさまな性差別が横行している」と断じた。
「がんばってもそれが公正に報われない社会が待っている。がんばったら報われると思えるのは、周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、やりとげたことを評価してくれたからこそ」と諭した。
その上で、締めくくりに述べた次のことばたちが、ボクの心に響いた。
「あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください」
「恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれない人々を貶めるためにではなく、そういう人々を助けるために使ってください」
「強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください」
「フェニミズムは、決して女も男のように振舞いたいとか、弱者が強者になりたいという思想ではありません。フェニミズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です」
「これまで、あなた方は正解のある知を求めてきました。これから、あなた方を待っているのは、正解のない問いに満ちた世界です」