ムラカミの「6月」を聴くはずが・・・ | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

NHK文化センター京都教室「全力で聴く」。

昨日23日が3回目。

ムラカミのインターをビューしてもらう。

お題は、「6月」。

6月には、いろんな思い出があるのだが、その種明かしはしないまま臨んでもらった。

 

大学生の小林くんは、

「最近雨が続きますね~」

「水曜日は雨が多いらしいですよ~」とフワリと入った。

そして、「そんな雨降りの日はいやですか?」と来た。

「雨の日はしっとりしていい。晴耕雨読、読書も捗るし」と答えると、

続いて「少々の雨なら濡れても平気ですか?」と来た。

「濡れたら困るから、いつでも傘を持ち歩いてる。富山には、弁当忘れても傘忘れるなということばがあるくらい」と初任地のことわざを持ち出した。だが、小林くん、あまり反応がない。

あげく「晴れの日は運動しますか?」と来た。

ああ、いい感じできたのに、全然方向が違ったじゃん!

自分に興味のない事柄でも、知らないことばやキーワードが出てきたら、リフレインしてみてほしい。そこから話の展開があるはずだ。

 

ボクのラジオでのインタビューを聞いていて、

そのテクニックを学びたいと参加してくれた安井さん。

「ツバメの巣立ちの季節。村上さんにも巣立ちの頃があったはず。

どんなこと覚えていますか?」

絶好球が来た。

「いまから41年前の6月20日。富山放送局に新人アナウンサーとして着任した日なんです。まざまざと、その日のことは覚えています」

そしたら第二球は、「初めて放送したときのことは覚えていますか?」いいぞ、いいぞ。その調子。

生まれて初めての天気予報。スタジオでの「初鳴き」。何をどうしゃべったか何も覚えていないと答えたら、それ以上追求しても無駄と思ったのか、第三球は来なかった。

次の球は、ご自分が富山の味が好きらしく、グルメ話になった。

球筋が逸れてしまった。ザンネン。

 

京都の料亭で働く門脇さん。

「自分も含めて職場に独身女性が多いが、女子アナウンサーは独身が多いか?」と切り出した。ありゃ?ボクの扉は開けてもらえないの?

あ、そうか「ジューンブライド」と関連づけたかったんだ。

その後も「断片的事実」は引き出していくのだが、繋がらない。

ジグソーパズルのピースだけがたまり、

組み合わさらないままという感じ。合いそうなピース探してね。

 

電話交換の仕事をしている狭間さん。

手を口に当てて笑う仕草が癖のはにかみ屋さん。

季節柄、「あじさいの花で好きな色は?」と切り出した。

「ブルーかな」と答えたら、「ほかには?」と横道に逸れてしまった。

質問に困ると「ほかには?」と聞いてしまう人が多い。

「そういえばきょう来ているシャツもブルーですね」

そんなふうに展開すると、ピースが組み合わさる。

「よく似合ってますね」などとリップサービスされたら、もう扉全開。

 

大阪のことば磨き塾にも来てくれていた新井さん。

質問の時間が長く、ボクが答える隙間がない。

この日のラストバッターだったので、これまでの答えを反すうしながら、

まとめてくれたのだが、「その先」が見つからない。

だが、みんなのインタビューの感想を言う新井さんの「まとめ力」は、

なかなかのものだ。

 

きょうの5人、

「インター」を「ビュー」する難しさと面白さを両方味わったはずだ。

確実に扉は開いた。でも中に入ってこなかった。

今度は、中に来てね。そして、共感してね。