60回目を迎えたトークライブ。
ピアノ界のレジェンド、舘野泉さんが来てくださった。
ムラカミもいささか緊張気味。
だが、舘野さんは、「大物オーラ」を出さず、なんでもござれの人。
その雰囲気につられて、ゴミ出しの話を持ち出した。
日本にいるときは、一人暮らしの舘野さん、食事も作れば、
洗濯もする。掃除もすればゴミも出す。
「ゴミはね。水曜と土曜が大事なんだ。燃えるごみの日。
生ごみも出さないとね」とレジェンドがさも嬉しそうに語る。
この人にかかれば、なんでも面白いことになる。
藝大に落ちて、一浪した「空白」。
空襲で家もピアノも焼けて疎開した「空白」。
脳出血で倒れ、再び復活するまでの2年の「空白」。
その空白すら、楽しむ。楽しめる。
楽しむことが多すぎて、絶望している暇がないのだ。
柔和な笑顔は実にチャーミングだ。
一転して、ピアノには静かな表情でひたむきに向き合う。
「舘野さんの左手から奏でられる音は
時に軽やかで、時に雄大で優しく、また、激しく心を揺さぶり
大きく包み込む。一曲聴き終える毎に心身ともに浄化されていく
私には、そんな時間でした」という感想を聞いた。
「この一夜で人生の幅が拡がりました。星の瞬きが見えました」という
感想には、こちらが感動した。
舘野さんのトークと演奏が、多くの人の世界観を変えたようだ。
「2-1=1ではないという舘野さんのことばが響きました」とは30代の女性。捉え方しだいで世界は変わる。
「自分の中に迷いがないということは人として生きていく上で、とても強いものを育てられるんだと感じた。心の底から笑える歓びは、なにものにもかえがたいと思いました」
「ないもの、出来ないものに悲しむのではなく、あるもの出来るものに感謝をする。絶望経験が、力強いピアノに表れていて、元気をもらいました」
「プラス思考な生き方がピアノ演奏の美しさ逞しさに反映されているのが、よくわかりました。魂が揺さぶられました。一生に残る素晴らしい夕べになりました」
翌日は、父の日なので、
舘野さんに「父親」というテーマで聞いてみた。
チェリストの父・弘さんとは、友だちみたいに何でも話せたそうだ。
叱られたり、反抗したりした経験がない。
それが、絶望しない性格を育んだのかもしれない。
自分も、2人の子にとやかく言ったことがない。
あれだめ、これだめ、ああしなさい、こうしなさいと否定や命令をしたことがないという。
父親であることも楽しんでいるようだ。
ボクも嬉しいことばの種まきをしながら、好転人生を送ることを説いているが、舘野さんから吸収したことを意識した生き方を心がけていきたい。
(絵本『風の電話』の朗読と、
風の電話をモチーフにした『風に波に鳥に』の演奏)
(レジェンド、舌好調。たくまざるユーモアの持ち主)
(ムラカミが20年前ピアノを習っていた
鷲尾千晶先生と)
(加羽沢美濃さんも来てくれた)
(樹原涼子さん、渡辺俊幸さんも)