金子みすゞを読む | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

昨夜のトークライブには、

ようやく女優の若村麻由美さんに来てもらえた。

「いつか来てください」「いつか行かせてください」

決して社交辞令でないやりとりが何度か繰り返された末、

ついに実現したのだ。

しかも、2人の結びの神、金子みすゞの命日の翌日、

東日本大震災7年の日に。

 

おかげさまで、100人超えの満員御礼。

ほとんどが、ゲストの若村麻由美さんのファンで、

最初にボクが出ていったとき、

「あんただれ?」みたいな空気だったが、

麻由美さんとのトークが進むに連れ、

しだいに受け入れてもらえた気がした。

感想アンケートの中に、「若村さんを生で拝見したくて足を運びましたが、村上さんのお話が面白く、時間があっという間に過ぎました」と書いてくれた人がいた。

前半のトークは、

何の打ち合わせもしないまま、楽屋トークの延長のような感じ。

苦手なこと、人があまりやらないことに、

あえて取り組む麻由美スピリットが窺えた。

 

2002年、NHKの楽屋に麻由美さんを訪ね、直談判をした。

みすゞの詩を512編すべて朗読してくださいと。

麻由美さんは、その時、断ったつもりだったそうだ。

だが、そう解釈していないムラカミは、

分厚い金子みすゞ全集を置いて行った。

帰りの車中で、全集に読み耽り、

持ち前のチャレンジャー精神が湧きあがってきた。

そして、受諾してもらえ、のべ2週間あまりかけて、

スタジオで録音した。

女優に「感情を抑えて」という無理難題を言った。

1つの詩を3通りに読み、自分の思いと違うものがセレクトされても

我慢したと、このほど初めて聞いた。

かくして収録したものは、

CD化され、NHKサービスセンターから発売されている。

それを記念して、ボクが台本を書き、

若村さんに朗読芝居をしてもらった。

東京、名古屋、能登で公演した。

みすゞのモノローグに合わせて選んだ詩を朗読するスタイルだ。

薄幸なイメージのあるみすゞだが、海を眺めるのが好きで、本を読むことが好きで、母が好きで・・・無邪気な明るいところもあったに違いないと思って台本を書いた。「初めて直しのいらない台本に出会った」と褒めてもらった。

その台本をもとに、

モノローグを麻由美さん、詩の朗読を村上が、分担した。

ピアノ伴奏を中澤頼子さんにお願いした。中澤さんは、わざわざ台本に合わせて、オリジナル曲を作って臨んでくれた。

30分あまりの朗読を終えて、みすゞへの想いを語るうち、

麻由美さんの目から涙が流れた。

みすゞの詩のような透明で澄んだ涙だった。

みすゞの故郷・山口から来た女性が、「暗い人生、暗い詩で、もの悲しくなり、みすゞのことをあまり好きでなかったが、今日の会で大好きになりました」という感想を書いてくれた。こういうの嬉しい。

「美しい若村さんと、美女の傍で少しデレデレの村上さんとの間に、金子みすゞが見えました」という感想も。これも嬉しい。

 

麻由美さんは、二部は、和服に着替えて臨んだ。

藤村志保さんから贈られた着物に、

祖母の着物を仕立て直した帯を締めて。

当日に至るまで、何度も自ら連絡下さり、

様々なことへの目配りや気働きに感心させられた。

 

(左は、ピアニストの中澤頼子さん)