島田市で種まき | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

かつて旅人にとって東海道随一の難所として知られた大井川。暴れ川として知られ、ひとたび氾濫するとその河口は扇のように広がり、住人を苦しめた。静岡県島田市にある大井神社は、江戸時代、参勤交代の大名や、旅人たちが大井川鎮護を願い、旅の安全を祈願した。

大井神社には、水の神様、土の神様、日の神様が祀られている。大井川は、暴れ川だが、大いなる恵みをもたらし、この地域の人々の生活を支えてきた。そこで、まず水の神様が祀られた。水が氾濫した後は、土壌が豊かになり、土の神様が祀られた。土壌が豊かになると、さらに作物が育つようにと日の神様を祀るようになったというわけだ。

多くの神社は、洪水があっても流されない場所、水につからない高台に建立されるが、大井神社は、祀っている神様が大井川の水神様であり、そちらに向かって拝むことから、川に近いところに立てられた。だが、大井川の氾濫があると流され、そのたびに、その場所に再度建立されたが、元禄2年(1689年)に、現在の地に遷された。

 
その大井神社に隣接する「宮美殿」(結婚式場)で、
内外情勢調査会島田榛原支部の講演をしてきた。(7月5日)
その場に、大井神社の名誉宮司の片川昭壽さんがいらした。
昭和6年生まれの86歳。宮司を45年も務めた。
講演後、いくつかの質問のあと、片川さんが立ち上がり、
「ひとこと感想を申し述べたい」と言われた。
「これまで多くの講演を聞いてきたが、
 こんなに心に残るものはなかった」
「ここに来た時、講師の姿を認めたにも関わらず、仲間うちだけで挨拶を交わし、きちんとご挨拶をしなかった。大変失礼しました」
「しかも、私が大井神社の宮司だったことを、ご存じで驚きました」
神に仕えてきた人生の大先達に言われ恐縮ものだったが、
何より嬉しいことばであった。