型破りな芭蕉 | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

型を会得した上での型破りな生き方を紹介する第三弾は、

俳人・松尾芭蕉。

芭蕉は、「わび」「さび」という古風な美意識を求めた人に

思われがちだが、常に新しいものを見い出そうとした人だ。

彼を象徴することばに「不易流行」がある。

変わりゆく新しいものの中に普遍的なものを見つけようとした。

俳句の本質は、実は「意外性」にある。

気づきや、着想、目のつけどころが大事だ。

ダメなものは、すぐやめる。

いいものは、すぐ取り入れる。

主観的な「重み」を拝した「軽み」を評価した。

 

芭蕉は、人の能力を引き出す「場」を用意する

優れたプロデューサーでもあった。

弟子の作った句を一字一句変えずに解釈によって高めた。

相手を否定せず、相手を活かしていく超一流の指導だ。

ダメなところを指摘していたのでは、意欲を削ぐ。

機をとらえて法を説く「対機説法」を活用した。

句会の顔ぶれも、時々入れ替えて刺激を与えた。

その場で「即興」で句を作らせて創造性を高めた。

よく旅に出たのも新しいものに出会うためだ。

自分の句を示し、弟子に感想を求めた。

そして、その意見を取り入れた。

 

時代に合う新しい感覚を求めつつ、その場限りにならないよう、

何度も推敲し、練り上げる。それこそが「不易流行」。

機を見るに敏だったから、「軽くて深い」句が多く生まれたのだろう。