型を会得した上での型破りな生き方を紹介する第三弾は、
俳人・松尾芭蕉。
芭蕉は、「わび」「さび」という古風な美意識を求めた人に
思われがちだが、常に新しいものを見い出そうとした人だ。
彼を象徴することばに「不易流行」がある。
変わりゆく新しいものの中に普遍的なものを見つけようとした。
俳句の本質は、実は「意外性」にある。
気づきや、着想、目のつけどころが大事だ。
ダメなものは、すぐやめる。
いいものは、すぐ取り入れる。
主観的な「重み」を拝した「軽み」を評価した。
芭蕉は、人の能力を引き出す「場」を用意する
優れたプロデューサーでもあった。
弟子の作った句を一字一句変えずに解釈によって高めた。
相手を否定せず、相手を活かしていく超一流の指導だ。
ダメなところを指摘していたのでは、意欲を削ぐ。
機をとらえて法を説く「対機説法」を活用した。
句会の顔ぶれも、時々入れ替えて刺激を与えた。
その場で「即興」で句を作らせて創造性を高めた。
よく旅に出たのも新しいものに出会うためだ。
自分の句を示し、弟子に感想を求めた。
そして、その意見を取り入れた。
時代に合う新しい感覚を求めつつ、その場限りにならないよう、
何度も推敲し、練り上げる。それこそが「不易流行」。
機を見るに敏だったから、「軽くて深い」句が多く生まれたのだろう。