岐阜県の郡上八幡で、俳優・近藤正臣さんと対談してきた。
近藤さんは、渓流好きが嵩じて、30年あまり郡上八幡に通い詰めている。
「ガキを忘れた大人はただのジジイ」と、いまも川ガキなのだ。
ここでは、俳優の顔をしなくていい。素の自分でいればいい。
すっかり、地元の人に溶け込んでいる。否、地元の人だ。
対談は、近藤さんが常連の喫茶「門」で。
名刺を渡して挨拶をすると、「よう、存じています」と。
この一言で、壁はなくなる。
名刺を見て、ボクの顔を見て、「63歳・・・なんや調子狂うな」
「京都生まれか。京ことばでいきまひょか」
人と馴染むのが早い人だ。
対談は、ほとんど近藤さんの一人語り。
万事、落語調なのだ。
渓流釣りの話も、幕末の志士だった曾祖父の話も、粋だった母の話も、
登場人物のセリフを演じ分け、面白く語るから、ついつい聞き入ってしまった。
合いの手を時々入れるだけで、質問する暇もなかった。
「きょうは、ぎょうさん、しゃべらせてもらいましたわ」とゴキゲンさん。
これまでのどの対談記事にはなかった興味深い話も出た。
ここに書くのは、もったいないので、「月刊清流」4月号をお楽しみに。
対談後、釣り場の吉田川にある格好の撮影スポットに案内してくれた。
そして、腕組みをして写真撮影してくれたのだ。
滑りやすい岩場だったので、心配りしてくれたのだ。
役作りにも入念な心配りをする近藤さんだが、
素顔の時も、飄々と淡々と、心配りする人だった。