矢作直樹さんは、
約束には「見える約束」と「見えない約束」があるという。
普段、約束を交わすのは「見える約束」。
それに対して、私たちが生まれながらに持ってきたものが「見えない約束」。
一人一人に生まれてきた「存在意義」がある。
それが「生まれてきた意味」であり、「果たすべき約束」といえる。
ただ、見えない約束に固執せず、
毎日の生活で「得る」もの、ふと「気づく」もの、そこで「学ぶ」ものを意識すればいいという。
他人と比較することも、他人から評価されることも最初から必要ない。
穏やかな矢作さんの口調のように優しく書かれた文章を読んでいると、
「自分が、自分が」という力みが消えていく。
この本の中で、矢作さんは、古来伝承される「口癖パワー」について言及している。
面白くなくても「面白い!」と口にする。
いまいちと思っても「楽しい!」と口にする。
そうすると面白くなり楽しくなる。
口にすることばで、脳が面白いことや楽しいことを自動的に見つけようとするのだ。
ボクが講演でよく話すことを、元東大教授が裏付けてくれたようで嬉しい。
ハーバード大学教授だったウィリアム・ジェームズさんのことばも引用されている。
「ことばが変わると心が変わる。心が変わると行動が変わる。
行動が変わると習慣が変わる。習慣が変わると人格が変わる。
人格が変わると運命が変わる」
「私はダメ」「オレは優秀」みたいに、コンプレックスやプライドで、
自分にレッテルを貼るのもよくないと、矢作さんは指摘する。
レッテルの根底にあるのは、自分は期待にこたえられないという思い込みと、
自分は周囲と違うという思い込みも「幻想」に過ぎないと言い切る。
レッテル貼りをして居心地が悪いときは「孤独」になればいい。
矢作さんは、孤独が好きだ。
孤独は、自分と違うエネルギーを感じている状態だ。
周囲との「結界」を作り、自分に課せられた約束を見つめ直す。
そうすれば、「自分は自分、人は人」と楽になる。
矢作さんは、参議院議員選挙に立候補して落選したが、
むしろ気分は爽快のようだ。
かねてから考えていた「日本人塾」の構想の実現に向けて準備をしている。
「日本をより良くしたい。日本人が培ってきた調和、寛容、柔軟、謙虚の姿勢を
世界に浸透させ、世界平和に貢献したい」これが矢作さんの約束。
約束を果たす上で、大事なのは「どんなときもお天道さまに背かない」こと。
おかげさま、おたがいさまの「感謝の心を忘れない」こと。
「経験を通じた気づきと学びが人生」だということを理解していること。
そして、自分の人生に現れる人たちは「約束された人」。
「いい人」「悪い人」という個別感情で区分けせず、
存在に感謝していれば、「約束」が果たせる。
まさに学びと気づき、自分の想いの確認の多い本であった。