妹を見る兄の心境だった。
22年ぶりに人前で歌うという叶さんを、
同じように不安な気持ちでハラハラしながら、
込み上げる嬉しさにドキドキしながら、
傍らで見守っていた。
歌い終わったとき、同じようにほっとした。
叶和貴子さんは、あこがれの女優だった。
艶っぽさが、何とも言えなかった。
その叶さんが、リューマチと闘っていると伝え聞いて心を痛めていた。
『日曜はがんばらない』に出演をお願いしたことで知己を得た。
気取らない人、気遣いの人で、いっぺんに惹かれた。
歌が大好きな少女だった。
念願叶い、北海道から上京し、
郷ひろみさんや、ピンクレディーのバックコーラスをしていた。
女優になってからも、『冬の蝶』など6枚シングルを出している。
リューマチになってからも、いつか歌えたらいいと想い続けていた。
25年間、病と向き合いながら、自暴自棄になったこともある。
過去に連綿としたり、未来に怯えたりせず、
その日その時、
いまを噛み締めながら生きていくことにしたら、少し楽になった。
だから座右の銘は「いっぽいっぽ」。
ゆっくり熟成させながら、自分の心境を綴った歌を吹き込んだ。
6曲の宝物が出来た。
毎月、恵比寿で開いているトークライブで歌ってほしいとお願いした。
「歌えるかしら…」「話せるかしら…」、迷いながらの決断だった。
「1曲歌えたら」「2曲なら・・・」と言っていた叶さんだが、3曲歌い切った。
楽しそうに歌っていた。
会場には、叶さんの闘病をよく知る家族親族知人も詰めかけた。
みんな、ニコニコしていた。
この場を共有出来て、ボクも幸せだった。
最後に、この先叶えたい夢は?と聞いた。
「ムラカミさんと、ラジオ番組をやりたい」
な、なんと嬉しいことを言ってくれるんだ。妹よ。
想えば叶う。
この夢、叶えたい。
(歌舞伎町の駆け込み寺の玄秀盛さんも叶ファン)
(本当に酒を飲みながらの撮影だった黄桜のCM)