源ちゃんと呼びたくなる親しみがある。
明治学院大学教授、高橋源一郎さん。
ラジオビタミンの後継番組『すっぴん!』のコメンテーターとして出演の時、
NHKのスタジオですれ違いざまに、軽く挨拶しただけだが、
ほんの数秒の出会いでも、親近感を抱いた。
1951年1月1日生まれ。65歳。
やさしく深く面白いコメントに定評がある。
小説もかけば、競馬評論もする。
4度の離婚歴と5度の結婚歴がある。子どもは5人。
なんだかよくわからないが、愛すべき人なのだ。
源ちゃんが、朝日新聞で、胸のすくような論評をしていた。
我が意を得たりと思った。
『沈鬱な表情の5人が並んで立ち、思い思いに、ときに口ごもりながら、
「謝罪」のことばを述べた。いったい、彼らは、なんのためにそこにいて、誰に、どんな理由でそのことばを口にしているのか。どれもよくわからないことばかりだった。同時に、これは、わたしたちがよく見る光景であるようにも思えた。
この「事件」に関して、即座に、おびただしい意見が現れた。
たとえば、
「SMAPの解散は昨夜までしょうもないゴシップだったのに、
昨夜の会見を境に雇用者の圧力で被雇用者の意思が曲げられるとか、
批判検証をしないマスコミとか、個人を犠牲にして感動を消費する社会とか、日本が抱える複数の問題がクローズアップされて一気に社会問題へランクアップしてしまった」
ツイッター上に現れた、この呟きは、多くの共感を呼んだが、
それほどに、人びとの関心は深かったのだ。
米ロサンゼルス在住の映画ジャーナリスト猿渡由紀は
「こんな騒動は、アメリカでは絶対に起こり得ない」と書いた。
それは、「人気グループの解散も、タレント事務所の移籍も、
本人たちがしたいならするだけのことで、当たり前に起こる」からだ。
自分の足元を見つめること。
そして、それがどれほど脆弱な基盤の上に置かれているかを知ること。
それでも自分の足で歩こうとすること。
そんな場所から生まれることばを、わたしたちは必要としている。
「組織」や「社会」にしゃべらされることばではなく、「自分の」ことばを』
さすが、源ちゃん、暗黙のルールが潜む社会の怖さを、
鋭く指摘している。
そして、ムラカミは思う。
事実と真実は違う。
SMAPやベッキーに目を奪われて、真実を見逃してはいけない。