このノリである。
学生たちといるとエネルギーをもらえる。
ことば磨き塾を終えたら、学生たちと飲み会に行くのが恒例になっている。
卓上に横たわっているのは田代翔吾くん。4回生だ。
彼は、自分を持て余していた。
自意識過剰だった。
初めて、彼が塾に来た日。
遅れてきたにも関わらず、悪びれもせず、
明るい大きな声で「こんばんわ~」と現れた。
無理して明るく振る舞っているのがミエミエだった。
彼にはトラウマがあった。
高校1年の夏ごろ、対人恐怖症から、摂食障害になった。
人に接するとき、無理して「明るく」して、自分の存在を誇張するようになった。
ただ「うるさいヤツ」だと思わせて、自分の内面を見せないようにした。
演技している自分をもどかしく思っていたが、やめられなかった。
この塾に来て、そんな自分を見抜かれ、
自分は自分でいいんだと思えるようになった。
等身大の自分を素直に出せばいいんだと思えるようになった。
自分に嬉しいことばを使うことで変化していった。
「ムラカミさんとの出会いがボクを変えた」と、
彼は、ボク以外の参加者に言っていた。
恥ずかしくて、僕には直接言えなかったようだ。
就職試験も、最初のうちはうまくいかなかった。
「誇張」が上滑りしたからだ。
自分らしくあればいいと思えるようになってからは、
落ち着いて冷静に「誇張」せず、ありのままの自分を見せられるようになった。
希望の商社に内定した。
彼は、自分を変えた塾に、次々友人を連れてくる。
昨日は、弟も伴った。
自己表現が得意でない弟は、最初はためらっていたが、
面白みを感じ、次回以降も参加したいと言ってくれている。
田代くんは、商社の人気者になり、誰からもかわいがられる存在になるだろう。
名前のごとく大いに「翔んで」ほしい。