63歳で直木賞と、あちらこちらで公言してきたムラカミにとって、
励みとなるニュースだった。
史上2番目となる高齢で直木賞の受賞が決まった。
青山文平さんが、67歳で受賞を決めた。
40代前半のとき、作風の異なる純文学作品で作家デビューしている。
創作に専念するため勤めていた出版社を退社したが、
創作活動は、10年で行き詰まった。
筆を再びとったのは還暦を過ぎてからのことだ。
受賞作は、江戸時代の庶民を描いた短編集だ。
物語に登場する女たちは、一筋縄ではいかない。
したたかさと妖しさを秘めている。
「男は理屈の足場を築かないと思考が出来ないが、
女は存在の地肌の上にじかに立っている」。
なーるほど。
「人間を生きているままの色で描きたい。
小説も人も、多面性にこそ味わいがあるはず」。
昨日の朝日新聞の「ひと」欄を描いた女性記者の表現が、
これまた素晴らしい。
「滋味深い静謐(せいひつ)な文章に時折、静かな反骨心が香る」
よく、こういう表現が出てくるものだと、文章好きのムラカミも、思わず唸った。
これまた刺激。
63歳は、上方修正せねばなるまいが、
青山さんを目標とし、滋味深い静謐な文章が書けるよう頑張りたい。