(シリーズ最終巻61巻)
児童文学のミリオンセラー『ズッコケ三人組』シリーズが、
去年12月、完結した。
小学校6年生だった三人組も50歳になった。
元気いっぱいだが、おっちょこちょいのハチベエ、
物知りなのに、テストは苦手なハカセ、
身体が大きくのんびり屋のモーちゃん。
この3人が協力し合って、探検や事件解決に活躍する。
第1巻が出たのが、1978年。
2005年からは、中年になった三人組シリーズに引き継がれ、
ついに完結した。
山口に勤務していた頃から、那須さんとは親しくさせてもらっている。
ズッコケシリーズは、全巻取り揃えてある。
文庫化された『ズッコケTV本番中』に、解説も書かせてもらった。
多作にして駄作なしと言われる那須さん。
次から次に新作が送られてくるのだが、読むのが追い付かない。
那須さんには、三人組のキャラクターがすべて存在していると思う。
まず、ハカセのように博識。
ひょうきんなところは、ハチベエ似。
「まぁ、ええんじゃないの」と鷹揚なところは、モーちゃんかな。
那須さんは、広島市生まれ。
3歳の時、被爆した。
その体験をリアルに反映した作品も発表しているが、
ズッコケシリーズでは、戦争や原爆も取り上げなかった。
三人組は平和だからこそ、のびのび自由に活躍できる。
生みの親としては、戦争とは無縁でいさせてやりたかったという。
『花のズッコケ児童会長』(85年)では、
「たくましい花山っ子を育てよう」というスローガンを掲げた優等生に対抗して、三人組が児童会長選に挑む。
その優等生が、がんばれない弱い子に我慢ができず、
いじめてしまう性格だと知ったからだ。
がんばりたくてもがんばれない子が、
がんばることを強制されないのが民主主義。
戦争の記憶が残る広島で、
戦後の民主的教育を受けて育った那須さんが
三人組に託したメッセージなのだ。