詩人、吉野弘を貫いたもの | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。





吉野弘の書いた詩『祝婚歌』は、よく結婚式で朗読される。

・・・愚かでいるほうがいい

完璧を目指さないほうがいい

2人のうちどちらかがふざけているほうがいい・・・


27日のNHK『クローズアップ現代』で、

静かな吉野弘ブームが取り上げられていた。

吉野は、去年87歳で亡くなるまでに500編あまりの詩を残している。

その詩を心の寄り処にしている人が多い。


吉野の詩は、日常のさりげないヒトコマが題材になっている。

夕方の通勤電車で、お年寄りに席を譲った少女の心理を描いた『夕焼け』

やさしい心の持ち主は、いつでもどこでも われにあらず受難者となる

『生命は』は、今年、岩手県大槌町の成人式で朗読された。

生命は自分自身だけでは完結出来ないように作られているらしい


終戦で、

軍国少年の価値観を覆された吉野は、

絶対的な価値観などないと知る。

そして、21歳の時、詩人として生きていく決意を綴っている。

人間は、その不完全を許容しつつ愛し合うことです。

不完全であるがゆえに斥け(しりぞけ)合うのではなく、

人間同士が助け合うのです。

他人の行為を軽々しく批判せぬことです。

自分の好悪の感情で人を批判せぬことです。

善悪のいずれか一方に

その人を押しこめないことです。


ここに吉野弘の詩の原点があると、番組ゲストの詩人・和合亮一さんは言う。

吉野さんの「物差し」がここにあると言う。

人は、善悪や○×に区分けしがち。それで満足してしまう。

2極に押し込めていいのか・・・

割り切れないことから目をそむけてはならないのではと、ボクも思う。


詩は、ごんべんに寺と書く。なぜか・・・和合さんは考えてみた。

詩は「寺子屋」なのだと気づいた。

多くの人が、人生や想いを語る場。

生き方や考え方の指針を与えてくれる場。

ボクも、折にふれて、詩を書いていきたい。