兵庫県西宮市の高井千珠(ちづ)さん。
西宮市の実家に、
双子の子どもと里帰り中に阪神淡路大震災に遭遇した。
当時1歳半の長男・将(しょう)くんが
タンスの下敷きになって亡くなった。
千珠さんは、息子の死を受け入れられないまま、
震災5年の命日に「将くんのホームページ」を立ち上げた。
これまでに32万人近くがアクセスしている。
ホームページを通しての出会いが支えになってきた。
ホームページのおかげで前向きになれた。
双子の一人、長女の優さんは大学生になった。
優さんは、いま母親を主人公にした
震災ドキュメンタリー映画を作っている。
その娘の姿を見ながら、
千珠さんは、優さんの中に、将くんはしっかり生きていると実感する。
優さんと同い年だから、将くんも20歳を過ぎた。
「ママはママの人生を楽しんで生きて」と
将くんが言っているような気がする。
「悲しむだけが、将を想う方法ではない。笑顔で生きよう」
そんな思いを込めて詩を書いた。
その詩に曲がついて、「笑顔の向こうに」というCDになった。
《この笑顔の向こうに たくさんの悲しみがあるの
どんなに笑顔を作ってみても 悲しみは癒されない》
歌詞からは、20年間の心の葛藤が感じられる。
涙を流し続けた日々から、気持ちの変化が出てきたことが、
歌詞にも表れている。
《大きすぎる悲しみの向こうから
幸せだったあなたたちとの日々が
今の私にやさしく手を振っている それが心の支え》