中国古箏演奏家の伍芳(ウーファン)さんは、上海生まれ。
25年前、
日本で働いていた姉の伍鳴(ウーメイ)さんを頼って、来日した。
姉は、自分がマネイジメントして、
妹を国際的演奏家にするのが夢だった。
ところが、
大好きで頼りにしていた姉は、阪神淡路大震災で亡くなった。
姉は27歳だった。
20年たっても、伍芳さんは、
姉のことを1日たりと忘れたことはない。
当時住んでいた西宮市の自宅は全壊し、家財道具は瓦礫と化したのに、奇跡的に、楽器は無傷だった。
姉が日本で演奏を続けなさいと言ってくれているように思えた。
両親は上海に帰ることを進めたが、
姉の気持ちを汲んで、日本に残ることにした。
このまま帰国したら、地震に負けたことにもなる。
夢を中途半端にしたくなかった。しばらくして、演奏活動を再開した。
この20年、姉は、演奏活動の支えになっている。
姉がどこかで聞いてくれていると感じる。
迷ったとき、いまでも心の中の姉に相談している。
姉のために、ずいぶん曲を書いたが、
時が経つに連れて曲調に変化が出てきた。
当初は、せつなさや寂しさがあったが、
夢や希望が感じられる内容になってきた。
震災から20年になる今年、
姉のために、新しい曲「あのひとともに」を発表する。
姉の口癖は、「きょうは、いいことがありますよ」だった。
新曲も、姉が笑顔で「いいことがありそうだね」と
言ってくれそうな曲に仕上がっている。