大河ドラマ『花燃ゆ』がいい。
登場人物たちが口にすることばがいい。
伊勢谷友介さん演じる松陰が言う。
「人は何故学ぶのか。
知識を得るためでも、職を得るためでもなく、
出世のためでも、人に教えるためでも、人から尊敬されるためでもない。
己のため、己を磨くためなのだ」
「死にもの狂いで学ばないと、この国は守れん」
大沢たかおさん演じる小田村伊之助が賛同して言う。
「世のため、己がなすべきことを知るために学ぶんだ」
儒学が絶対的であり、西洋の知識など不要とされた時代。
西洋のことを著した書物を読むことを幕府は禁じた。
だが、若者の知識欲には勝てない。
松陰も伊之助も「禁書」と言われるものを読んでいた。
松陰は、幼い妹の文に噛んで含めるようにして言う。
「本は文字ではない。人だ。
本を開けば、他の人の考えに触れることが出来る。
遠くの人にも会える。生きるのに迷っていたのは自分だけでないと気づく。
人生のあらゆることを教えてくれる」
西洋の書物を読むことを憂える叔父の玉木文之進に対して
「何が良くて、何が悪いか、自分の頭で考えたらいい。
考えることが出来るものは、かぶれも染まりもしない」と断言する。
この時代の人々は、とにかく本を読んだ。
いまのように印刷技術も発達していないから、1冊の書物を廻し読んだ。
書き写して読んだ。そして考えた。
松陰は、日本を歩いて回り、目で耳で学んだ。
その知識を惜しげもなく、伝えた。
己を知るためには、多くの尺度がいる。
その尺度として、人を知る読書がある。
イケメン俳優が出ているからという理由でもいいから、
若い人たちにドラマを見てほしい。
外敵が脅かし、幕府が揺らぐ中で、
この国を必死に守ろうとした若者たちがいたことを知ってほしい。