私的認知症の作業療法とは その7家族関係が変化する | 作業療法士杉長彬(すぎながあきら)のやる気を高めるコミュニケーション

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さて、認知症の作業療法とは、より良い時間の実現なのだ!という一定の結論に至った私だったのですが、

鎌倉先生の考え方以上に、認知症の作業療法を説明するのに、良い考えに私は、出会うことになりました。


それが、三好春樹先生のいう関係障害論という考え方です。


関係障害論というのは、簡単いうと
認知症の問題
老いの問題というのは、
本人それ自体に問題があるのではなく、
本人とそれを取り巻く環境との関係において問題が生じているのだ
という考え方です。



認知症の人が問題なのではなく。
認知症の人とそれを取り巻く家族や社会との関係が問題なのだという考えです。


私はこの考えを知った時に、視野が一気に広がりました。



作業療法の対象として、今までで本人が良くなったのか?本人がどうなのか?

その患者さん個体だけを考えていたから、
自分たちのやっていることをうまく説明できずにいたんだということに気づいたのです。


認知症の作業療法で行うことは、
患者さんと患者さんを取り巻く環境そのものをよくすることなのだと捉えれば、
もっと自分たちのやっていることをもっと堂々と説明できる!

そんなことを思いました。



ここでまた一人事例を紹介したいと思います。

Aさんとしておきます。

Aさんは認知症の末期の方でした。

症状が激しかった頃は、暴言、暴力、徘徊が著名で、精神科に入院してきた方でしたが、入院後肺炎を併発しことにより、

ADLはどんどん低下、
入院前のような激しさはなくなったものの、
日中ベッドで臥床を強いられることになった方でした。



そんなAさんにOTは、毎日お部屋を訪問し、Aさんの民謡を小さなCDデッキで枕元で聞かせ、一緒に歌うという作業を行っていました。


さて、Aさんには、よく面会にきてくるお嫁さんがいました。

お嫁さんは、Aさんと作業療法士が民謡をきいてい楽しそうに歌っている場面を見かけました。

そして、「民謡でこんなにお母さんが笑顔になるのなら、私もやってみよう!」
と思いました。


次の日から、お嫁さんは、面会の度に、民謡を録音したカセットテープを持ってきて、
面会の度に一緒に聞いて、一緒に歌い楽しい時間を過ごしたそうです。


それから2年ほど時が立ち、私はある時外来の受付でAさんのお嫁さんに呼び止められました。

『お久しぶりです。Aの嫁です。入院中は本当にお世話になりました。義母はあれから、転院し、転院先の病院で穏やかに息を引き取りました。』というお話をしてくれました。


しかし、私が驚いたのは、その後のAさんのお話でした。



「私、作業療法士さんには、本当にいっぱいたくさんのことを教えてもらったです。本当に感謝しています。私、義母にとってあんなに歌が効果があるなんて知りませんでした。民謡があんなにいいなんて本当に作業療法士さんに会ってなれば、わからないことでした。

実はね私、この病院を義母が転院してからも、面会の時には、テープレコーダーを持って行って義母に聞かせたんです。そしたら、義母が死ぬ間際になって私にありがとうって言ってくれたんです。

私、実は若い頃義母にすごくいじめれたんです。
私に赤ちゃんができなかったものだから、いじめられて、、、だけど、義母はその時のことも、ごめんねって死ぬ間際になって言ってくれたんです。
『こんなに歌を聴かせてくれてありがとう。あなたに若い頃赤ちゃんができないからといってひどいことを言ってしまったけど、あの時は本当にごめんね。だけどあれからあなたはすごく良くしてくれて、本当に感謝しているのよ』とそんなことを義母が言ってくれて私は本当に嬉しかったんです。私はそういうことで本当に作業療法士さんには感謝しているし、たくさんのことを教えてもらいました。」

とこんなエピソードを教えてくれました。
私は大変に感動しました。


なるほど!認知症の作業療法というのは、

その効果というのは、本人だけでなく、
本人を取り巻くその人的環境そのものに影響をあたえるのだ!と
その作業療法の持つ、予測不可能性というか、懐の広さというか、ダイナミックさなようなものを感じとても感動したのです。




Aさんに歌という作業を提供することで、
Aさんは亡くなってしまったけど、Aさんのお嫁さんは、永年抱えていた嫁姑のしこりのようなものを解消し、非常に良い気持ちで最期Aさんを見送ることができた。
ということなのです。


なるほど!これはすごい!
作業療法というのは家族力を再生させる力を持っている!
この事例から私は自分の行う作業療法というものに随分自信が持てるようになりました。




作業療法によって、その方がもっとも輝ける瞬間を作り出す。


そして、その瞬間を、その人と関係する多くの人と共に共有する。
そのことによって、その人と、その人の周りの人的環境との、関係が変化していく。

そういう事を目指すのが認知症の作業療法なのではないかと、思ったのです。


その中では当然家族関係の変化も起こりえるし、その方に対する介護関係の変化も起こりえるのではないかと思います。


障害軽減の手段や技能獲得の目標なんていうその人個体で、効果を考えるもところを越えて、より広範囲に自分たち作業療法士の対象を捉えるというところに、


作業療法士の奥深さを感じ、この仕事は面白い。
一生やる価値のある仕事なんだということを感じたことを覚えています。




続く~
認知症のある方への作業療法 中央法規出版より本を書いています。(共著)
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