私的認知症の作業療法とはその8 作業療法士とは演出家だ | 作業療法士杉長彬(すぎながあきら)のやる気を高めるコミュニケーション

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このように、認知症の作業療法というのは、
効果を患者さん個体で見るのではなく、患者さんと患者さんを取り巻く環境が変わったかどうかを考えていけばよいのだと
私は一つ結論がでました。




Sさんという方の事例を紹介いたします。

Sさんという方は、80歳後半のアルツハイマー型認知症の男性の方で、
入院前は大声で叫ぶ、
そこらじゅうにあるものを投げ捨てるといった、
認知症の周辺症状が激しくて精神科病院に入院した方です。


入院して、2~3週間後、薬物療法の効果により、Sさんはかなり穏やかになりました。


穏やかになったので、退院のことを考え、奥さんとソーシャルワーカーとの面談をすることになりました。

奥さんは、いくらSさんが穏やかになったとはいえ、入院前の大変だった記憶が強く残っており、「また一緒に暮らすのは無理。退院後は施設入所を検討したい」と考えていました。


そんな中、作業療法士はSさんとOTの時間に、Sさんが大好きな囲碁をやる機会がありました。


Sさんは囲碁が大好きで、昔は囲碁クラブに行くほどやりこんでいた方でしたが。
そんなSさんだったので、囲碁を始めると、驚くほど生き生きとする様子を見せ、勝ったり負けたり勝敗がつくたびに本当に嬉しそうな表情をうかべていました。



そんな様子をスタッフが写真にとり、その写真を奥さんに渡した時に、奇跡がおきました!

なんと、奥さんがその写真を見た時に、
気持ちが変わったのです。

「ずいぶん穏やかな様子で安心しました。昔の優しかった頃の夫の時と同じ顔をしています。
もう一度だけ家でやり直してみようかなと思います。」

奥さんはそのように語り、退院後は施設と決めていたその気持ちを変え、また家で引き取りたいと思い直したのです。



私はこの事例から多くのことを学びました。

作業療法はご本人だけでなく、家族の気持ちも変える力があるんだ。

家族とご本人の関係さえも良くしていく。そんな力を作業は持っているのだとえらく感心しました。



これは作業療法の効果として、
個体にどれだけ変化を起こせるかばかりを考えていた時には考えられなかったアプローチです。


手段としての作業、目標・目的としての作業だけを考えて、自分のアプローチに自信が持てなかった時とは全然違うものでした。


私は作業療法士というのは、「演出家」なのではないかと考えています。

つまり、患者さん良いところを、引き出して、それをいかに演出するか!

演出し、患者さんの良いところを患者さんを取り囲む多くの方に見ていただき、肯定的な評価をしてもらうことで、
患者さんがもっと社会に受け入れやすい環境を作る。
そこに作業療法の意義があるのではないかと思います。


認知症の方のケアを考える時、周りの人的な環境から変えていくという考えは、何にもそれほど新しいものでもありません。



パーソンセンタードケアの認知症ケアマッピングの方法論なんかも

いかにスタッフの関わり方を見直して、ご本人にその人らしい生活を送れるようにするかという考え方だと思います。



また、実は、もっとも治療対象として個体を見ているような考え方である学習療法でさえ、
その学習療法の成功事例の本などを読むと、
単に、「読み書き計算が脳に良い」という学習療法の定義を越えて、それ
以上の現象が現場で起こっていることがわかります。
学習療法は、
スタッフと一緒に学習をすることがコミュニケーションの手段となっていることがポイントで、
学習療法をして、
「あれッ実はこの人こんなにできるだ!!」と
介護者のご本人に対しての認識が変わることが、重要なポイントのようです。

そのことによって、こんなにしっかりしているんだったら、オムツの中でじゃなくてトイレにできるように介護の仕方を工夫しようか?
とか
これだけ文字が読めるんだから、
お昼のメニューの放送をお願いしようか?
など、いろいろな提案が
介護する側から上がり、
その人を取り巻く環境が変わって行く。
そこに学習療法の真髄があるように思います。
(私の少ない学習療法の経験と、事例集を読んでの感想ですが、、、)



まあ少し話はずれましたが、
作業療法士というのは、今まで
治療者、訓練者、パートナー、など、いろいろな言われ方をしてきましたが、
私は、「演出家」
もしくは「企画者・コーディネーター」などの
表現も良いのではないかと思っています。
患者さんがもっとも輝ける瞬間を演出する。
そしてそれを、その方を取り囲む多くの方と一緒に共有する。
そのことで、その人が環境により適応して、生きやすい世界を作ることができたら、
それが十分に作業療法士との仕事として成り立つ
のではないか?と思います。
これが、
私の考える
「認知症の作業療法」です。



ここまで長い文章を読んでのくださった方。本当にどうもありがとうございました。


もともとは、病院の新人研修で、認知症の作業療法について、話そうと思い、まずはということで、ブログにまとめていたものでした。
思いがけず長い文章となってしまいました。
ここまで読んでくださった方ありがとうございました。




認知症のある方への作業療法 中央法規出版より本を書いています。(共著)
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