私的認知症の作業療法その2 Kさんとカレンダー作り | 作業療法士杉長彬(すぎながあきら)のやる気を高めるコミュニケーション

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さて、そんな私だったのですが、1年目のOTだった私は、認知症の病棟を担当する事になりました。


まだ1年目でしたし、訳も分からず、目の前の事をこなすように仕事をしていたのですが、
次第に、これが作業療法の効果というものなのかなあというケースにいくつか出会うことなりました。




Kさんという患者様です。

女性で、70歳代後半アルツハイマー型認知症の方でした。

日中はわりと穏やかなのですが、午後3時ごろを過ぎるとソワソワ、ソワソワされる方でした。

私は、Kさんが入院してすぐの時に出会いました。

「出口はどこなんだい?」
「わかんないよわかんないよ」
「怖いよ怖いよ」
とブツブツ言いながら、
病棟のホール内をウロウロして、
スタッフを見つけると、スタッフの手をギュッとつかんで離さない。
顔中、脂汗をかいて、心配そうな表情をしている。
そんな方でした。



そんなKさんだったのですが、
ある日のOTの時間で、来月のカレンダー作りを行いました。
カレンダー作りという作業は大きな模造紙に、
日付けの数字を書いた紙を順番に糊で貼っていくという単純明快な作業です。


この作業がKさんにはハマりました。
いつもなら不穏になる時間帯であるにも関わらず、この時間はとても集中して、
「次はどこに貼ったらいいんだい?」
「これはどこに貼ったらいいんだい?」
など
OTスタッフに聞きながら、その活動に集中して取り組むことができました。
その時間、Kさんは、不安を口にすることもなく、何かKさんらしさのようなものが見えたような気がしました。



私にとっては、
この体験が、認知症の方への作業療法の効果とは、こういうものなのか!!と感じた瞬間でした。


ただ、私の中には、疑問も残りました。



それは、Kさんは確かに、このカレンダー作りの時は、活動に集中して取り組むことができたのですが、

作業が終了すると、またいつものように不安そうな顔をして、病棟内をウロウロしていたのです。



私は、「確かに作業活動というのは、その時は人を落ち着かせる効果があるけど、その場限りのものなのかなあ?」そんなことを思いました。




そんなKさんですが、その後、1ヶ月ほどすると、次第に落ち着いて過ごせるようになりました。


夕方不安そうな顔で、病棟内をウロウロすることが減り、
また、気の会うWさんという同性の患者様と知り合い、
少しずつ、病棟のホールで椅子にWさんと座って、話をしてながらのんびり過ごせる時間が多くなってきたのです。



私はこの経験から
、『Kさんが落ち着いて良かった!』と思う一方で、
私は認知症の作業療法ってなんだろう?
っていう疑問が残りました。


精神科の治療の基本には、薬物療法があります。


精神科に入院して、本格的な薬物治療が始まると、イライラしていたり、不安そうだったり、怒っていたりするが、だんだんと穏やかになってくる。

私はそういう現象を何度もみました。


このKさんも例外ではなく、入院時は不安があったり、不穏でしたが、段々と気持ちのバランスが取れるようになって、落ち着いてきたんだろうな。
そのように考えられるケースでした。

確かににKさんは、作業活動中は、穏やかに過ごすことができた。

しかし、その効果が続くということはなく、
作業が終わるとまたいつもの不安そうな状態にもどってしまった。

また入院して1ヶ月も経つと、だんだん穏やかに過ごすことができた。



これは、作業療法によって少しでも穏やかな時間が取れるように増やせてきたから、ともとれるけど、
やはり大きいのは精神薬が効いてきたからと捉えるのが、妥当なんだろう。。。。

だとしたら、認知症の方に対する作業療法の効果ってなんなんだろう?
私にはそのような疑問が残ったのです。


私は、効果というからには、永続的なものであるものだと思うし、
その時は良くてもまた元に戻っちゃうっていうのでは、効果とは言えないと思いました。

また薬の影響で良くなったのか?
関わりが良いから良くなったのか?
それについてもハッキリしないものは、
これが作業療法の効果だと、胸を張って言えるものでもないな。

とそんなことを思っており、
じゃあいったい認知症の作業療法の効果ってなんなんだろう??

私は、やってもやらなくてもいいような、
効果があるのかないのかよくわからないような?
そんな曖昧な仕事をしているんだろうか?

となんだかモヤモヤした気持ちになりました。

ただいつかこれが認知症の作業療法の効果だって、自分でも納得したもの確立したいなあと、そんなことを強く思っていたように思います。

続く~


認知症のある方への作業療法 中央法規出版より本を書いています。(共著)
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