Oさんはアルツハイマー型認知症。80歳代後半の女性の方でした。
日中は車椅子で安全ベルトをして、病棟内ホールの隅の方にいて、「オーイオーイ」と大きな声で人を呼んでいる。
そんな方でした。
「オーイオーイ」と人を呼ぶので、「何だろう?」と思って行ってみると、
それは、安全ベルトを外してくれという訴えだったり、
全くなんだかわからないことを訴えていたりと、落ち着かない様子でいました。
コミュニケーションはあまりうまくとれず、
スタッフから話しかけると、
辻褄の合うような合わないような話をする方でした。
Oさんは転倒の危険もあり、
理解もあまり良くないことから、
安全ベルトを外すこともできず、
動き回るので、日中車椅子にて病棟の隅の方に追いやられている。
そんな状況でした。
そんなOさんが、
生け花のプログラムに参加することがありました。
そのプログラムでの参加の様子を見て私は驚きました。
剣山を見ると途端にOさんの目の色が変わったのです。
そして、
「これはこうします!」
「あの刺し方はいけません!」
など、自分の剣山に花を刺しつつも、人の刺し方に指導をするような様子が見られました。
実はOさんは、昔華道の先生だったそうです。
剣山を見た瞬間、自分が昔、華道の先生だったことを思い出して、
そして、まるで、華道教室の先生のように、さっそうと花を生け始めたというわけです。
しかも驚くことにいつもは曲がっていた腰がビシッと伸びて、すっと背筋を伸ばして花を活けていたのです。
あれっOさん!こんなに、腰が伸びるんだ!
私は驚きました。
そして私は、『なるほど!作業というのは、このようにその人の昔のリソースを引き出す力があるのか!』
と感心しました。
ご本人の持っている良いところその人らしい持ち味。
そういったものを引き出すのに、作業療法というのは、凄く効果があるのだなあと、
感心した出来事でした。
しかし、その後Oさんはどうなったかといいますと、
その後肺炎をこじらせそのまま内科系の病院に転院していき、
2~3カ月後には亡くなってしまったのです。
この出来事から、私は考えさせられました。
高齢者のリハビリをする場合、
結局最期はみんな誰でも死んでしまうのだから、
リハビリの効果として、
予後がどうなったとかは、考えない方がいいのかなあ?
と悩んだのです。
その頃の私の中にあったテーマは、
リハビリの効果というものを時間軸のどこに設定するものなのか?という事でした。
リハビリの効果というのは、リハビリをやった結果どうなったか?というリハビリの先にあるものを見て、効果と言えば良いのか?
リハビリをやっているその瞬間。その瞬間に良い表情やその人らしさが出ていれば、それで効果があるとするのか?
そのような議題を解消しなければ、高齢者のリハビリというものを、人に説明できないではないか?!
そんな事を考えていました。
リハビリの効果と時間の問題。
私は、それについて納得した答えが出せずただ悶々として、認知症の作業療法ってなんだろう??って
考えていた。
それが自分が、新人~2、3年目の頃までよく考えていた悩みでした。
続く~
認知症のある方への作業療法 中央法規出版より本を書いています。(共著)
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