今日の朝日新聞紙面より、
「スポーツのある街」Jリーグ100年構想(コラム)
ービッグクラブの地道な活動ー
「ハートフルは消滅することが一番いいんです」
J1浦和の普及活動を行うハートフルクラブの落合弘さん(65)は10日、スポンサーなどを対象にした活動報告会でこう切り出した。
小中学生にサッカーを教え、幼稚園児に身体を動かすことの楽しさを教えるー
2010年度だけで559回開かれ、延べ3万2195人が参加している。
だが、落合さんは「私が子供の頃だったら誰もハートフルには来ない」と続ける。昔は公園にでも行けば、近くのお兄さんやお姉さんが遊んでくれた。
本来なら、そういう地域環境を取り戻すのが一番いい。でも、それはほとんとなく、ハートフルでも輪に入れない子供が少なくない。
元浦和の選手で、普及のコーチを務める城定信次さんが教えた幼稚園の男の子。
サッカー好きで、毎回一番に駆けつける。それでも、ゲームの輪に入れない。子供同士で遊び慣れていないからだ。
城定さんは男の子の話を聞いたり、2人でボールを蹴って輪に近づいたりして輪に入れるように促す。
「今の子は挑戦しない。最初から出来ないと逃げてしまう子もいる」
だから教えるのは、サッカーの技術より相手を思いやる心だという。
例えば、2人がボールを持って互いに手でパスするゲーム。話し合わなければボールがぶつかってしまう。
ゲームは必ず、コミュニケーションをとらないとうまくいかないように作られている。
幸いなのは、こうした活動への理解が高く、支援の輪が広がっていることだろう。2003年度に3社だったスポンサーは今や7社。
03年度からスポンサーを続けるエコ計画(さいたま市)は「社会貢献の一環として支援を始めた。子供たちの笑顔を見て誇りに思う」と話す。
落合さんも「企業が支援して誇りを持ってもらえるような活動をしないと」と戒める。
ビッグクラブはトップチームの強さだけではなく、地道な活動から生まれる。