第2回定例会、文教委員会では、傍聴者の激しい怒号が飛び交う中で「けやき並木を守り育てる条例」が賛成多数で可決されました。
私が議会に入ってから9年経ちますが、今回のように委員会で傍聴者から大きな声が上がったのは初めてでした。
条例が制定された経緯と内容は次の通り。
① 馬場大門のケヤキ並木が国の天然記念物に指定されて今年で100周年を迎えた記念に条例を作ることになった。
② 3年前から喫煙や飲酒をしてゴミを散らかす人がいて市民からの苦情対応に追われていた。
③ 条例制定にあたっては関係課が集まって決めればいいので市民等が参加する審議会などは設置しなかった。
④ けやき並木での迷惑行為を禁止する。
・石積みへの立ち入り、火気の使用、独占して長時間にわたりほしいままに利用して迷惑をかけること。
・空き缶、吸い殻のポイ捨て、落書き、犬猫のふんの放置といった行為
⑤ 禁止行為を行った者には市長が指導勧告できる。喫煙については規則により2000円の過料を課す。
⑥ 運用についてはこれから職員がガイドラインを作成し、条例の施行と、過料制度は12月から実施する。
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市のけやき並木への愛はとっても伝わってきますが、市が具体的にどうやってけやき並木を守るのかというと条例では触れられておらず、市民の責務としては市の施策を理解して協力するということが述べられています。そして、⑤と⑥はこの条例とは別立てで引用している、府中市まちの環境美化条例によって、警察OBを雇用して過料(罰金)を徴収するということです。
けやき並木を保護する具体的な内容としては、2008年に定められた「国指定天然記念物馬場大門のケヤキ並木保護管理計画」に則って進めるということでしたが、こういったことは一切、条例では示されていないことも、とても残念です。
3月に行われたパブリックコメント手続きの際には、43人の市民から85件の意見が寄せられたといいますが、計画策定などの場合とは異なり、条例制定の場合は審議の際に内容を全て公開しないとのことでした。
市民の責務にやたら比重がかけられているにも関わらず、事前に市民を交えた審議会なども開かれず、今後運用されるガイドライン作りにも市民は関われない。市の都合だけで作られた条例。
迷惑行為を止められなかった具体個別的な一部の人に向けて条例が作られるということが、ある委員の発言でどんどん明らかになり、委員会は傍聴者からの怒号が飛び交う、異常な状況となりました。
そんな中、こんなニュースの記事がありました。今回の条例制定の背景とつながる部分があるなあと思いましたのでシェアします。
以下は奥田知志さんの言葉。
街には実際にホームレス状態の人がいるのに、人と人とが共感でつながっていこうとするところが見えなくなると、人は考えなくなり、感じなくなる。
これはどうなんですかね、ということを、立ち止まって考えなくてはならないところにきているかなと思います。
取材した記者からの意見。
知らず知らずのうちに社会から「排除」されることの怖さ。
福岡市は仕切りを設置する理由について、特定の人を排除する意図はないということでしたが、仕切りが生まれた経緯については、把握していなかった。街なかでも、仕切りについて意識している人はほとんどいない。
人知れず「排除」されるのは、ホームレスの方だけでなく、自分自身や身近な誰かかもしれない。
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昨年の秋、府中駅からけやき並木に降りたところにあったスペースが突然封鎖されました。
その顛末を、10月発行の府中萬歩記に寄稿しました。
あれから半年。
けやき並木を市民の中に排除と分断を作ってしまわないか。
公共スペースのあり方について、引き続き市民の皆さんと考えていきたいと思います。