禁煙治療について

 

以前よりたばこによる健康被害が受動喫煙(自分は吸っていないが近くにいる人が吸うたばこの煙を吸ってしまう事)も含め話題になっています。

 

タバコにはニコチンをはじめ4000種類以上の化学物質と250種類以上の毒物もしくは発がん性物質が含まれています。

タバコの煙に含まれる主な化学物質はアセトン、ブタン、ヒ素、カドミウム、トルエン、一酸化炭素、ニコチンなどです。

 

喫煙によりリスクが高まる病気として、脳卒中、心筋梗塞、白内障、糖尿病、メタボリックシンドローム、胃潰瘍、骨粗しょう症、骨折、慢性閉塞性肺疾患、肺炎、妊娠合併症、不妊、各種がん(閉経前乳がんも)などがあります。

また、皮膚の老化(ビタミンCの吸収抑制と消費により肌荒れ、シミ、シワ、白髪)、口臭、歯周病なども起こりやすくなります。

 

受動喫煙でも同様な疾患のリスクが高まります。夫の喫煙によりタバコを吸わない妻の肺がんのリスクは約2倍に増えると言われています。

また、お子さんの場合は喘息や中耳炎、低出生体重児、乳幼児突然死症候群などのリスクが高まります。

 

タバコは体には良くないと解っていながらやめられないのはなぜでしょうか?

タバコをやめられない方はニコチン中毒になっています。

タバコを吸うとタバコの煙に含まれるニコチンは脳にあるα4β2ニコチン受容体にすみやかに結合します。

そうすると快感を生むドパミンという物質がたくさん放出されます。

受容体に結合したニコチンはすぐに受容体から離れて消滅します。

その為タバコを吸わずにいるとドパミンのない状態(快感のない状態)にすぐなってしまい再びタバコを吸いたくなります。これがニコチン中毒です。

 

では、どのようにしたらニコチン依存症から離脱する事ができるでしょうか。

病院で行うニコチン依存症の治療法には大まかに2種類あります。

一つはニコチンパッチやニコチンガムなどでタバコ以外の物から体内にニコチンを取り入れ離脱症状が出ないような状態を保ち、その間にタバコを吸う習慣をやめるという方法。

 

もう一つはチャンピックスというお薬を使う方法で、このお薬はニコチン受容体に結合する力を持っており、ニコチンが結合した時よりも少量ながら快感を生むドパミンを放出させます。また、ニコチンが受容体に結合するのを邪魔する為タバコを吸ってもいつものような快感を得られずおいしいと感じにくくする作用があります。

 

禁煙治療の保険適応となる方の4条件

TDS(Tobacco Dependence Screener)―ニコチン依存症を判定するテストで10問中5問以上該当する

・ブリンクマン指数(1日の平均喫煙本数 x 喫煙年数)が200以上(35歳未満はこれに該当しなくてもよい。また、これに該当しなくても文書で禁煙治療に同意すれば治療可能)

・ただちに禁煙を始めたいと思っている

・禁煙治療を受けることを文書で同意している

 

TDS

①自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことがありましたか?

②禁煙や本数を減らそうとして、出来なかったことがありますか?

③禁煙したり本数を減らそうとしたときに、タバコが欲しくて欲しくてたまらなくなることがありましたか?

④禁煙したり本数を減らしたときに、以下のいずれかがありましたか?

 イライラ、神経質、落ち着かない、集中しにくい、憂うつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、脈が遅い、手の震え、食欲や体重の増加。

⑤④でうかがった症状を消すために、またタバコを吸い始めることがありましたか?

⑥重い病気にかかった時に、タバコは良くないと解っているのに吸うことがありましたか?

➆タバコのために自分の健康問題が起きていると解っていても吸うことがありましたか?

⑧タバコのために自分に精神的問題が起きていると解っていても吸うことがありましたか?

⑨自分はタバコに依存していると感じる事がありましたか?

⑩タバコが吸えないような仕事や付き合いを避けることが何度かありましたか?