How to fly・51 | 黒チョコの嵐さんと大宮さん妄想書庫

黒チョコの嵐さんと大宮さん妄想書庫

嵐さんが好きです。二宮さんが好きです。大宮さんが好きです。

こちらは妄想書庫でございます。大変な腐りようです。足を踏み入れる方は、お気をつけくださいませ。

※BL妄想書庫です


苦手な方はお気を付けください





















「電気が暗くなりましたよね?絵が黒いんで全然見えなくなっちゃいました」



カウンター席に同僚が戻ってきた



「もうすぐパフォーマンスが始まるんだよ」

「あのステージっすか?」

「うん」

「かわいい女の子とか出て来るのかな~、楽しみ~、もっと近くに行きます?」

「いや、俺はここでいい、もう一つ同じの」

「俺も先輩と同じのください」



酒の注文をし終えた時、音楽が変わった

この瞬間はいつも高揚したものだけど、今はもう…



ポールにスポットライトが入り、暗闇から足が伸びる


音に乗っているのか、音が乗っているのか


歩く、止まる、たったこれだけで、空間を、俺を、支配してしまう



「あれれ、女の子じゃなかったっすねー…って、先輩?どうしたんすか?」



…夢?

俺は夢を見ているのか?

明らかな妄想と強すぎる願望が、自分の目に勝手な映像を見せているのだろうか



足が勝手に身体を移動させた

ステージ近くのテーブルから椅子を引き、特等席を作って座る



夢ではないとはっきりと自覚したのは、纏う衣装に驚いたからだった

ゆったりとした黒のガウン

それを同じ生地の黒の腰ひも一本で着ている

袖は肘を隠し、膝も辛うじて見える程度



どういうことだ?



肌の露出が少な過ぎる

これで技に入ったら簡単に落ちてしまう

手に汗が滲む

床から足が離れた



危ないっ



椅子から腰を浮かせた瞬間、ガウンが目の前を舞った

足だけで支えられている身体の腕に絡まるそれは、彼を大きく見せている

宙で二周し、身体がポールと一体になる前にガウンは床に落とされた



筋肉は相変わらず薄く見えるのに、確かな力強さを感じる

技は多彩さを増し、しなやかさに磨きがかかっている



「…飛んでるなぁ」



自由に、力強く、飛んでいる



見惚れているうちにクライマックスが過ぎていたらしい

床の近くまで身体が降りてきている


目の前で伸ばされた足がクイと開く



…札挿し?



急いで財布から札を抜き、縦に半分に折り、二本の指で挟み、腕を伸ばす

慣れた動作であるはずなのに、指がいちいち震えていた

蛍光イエローで縁取りされた丈が極端に短い黒いパンツ

そこへ射し込む時も、札がくしゃりと丸まって、何度も失敗してしまった



ヘタくそ~



無言の唇が言葉を作る

これを言われるのは何回目だろうか

感情の種類を形容出来ない涙が、頬を伝っていた




足が床に着き、この場全体に一礼した彼へ、大きな拍手を贈る

立ち上がって賛辞を示す客は俺だけではなかった

テーブル席からも、ソファ席からも、カウンターの内外からも、大きな拍手が届けられる

店の装飾の一部として捉えられていたステージ

それをもったいないと思っていた頃が懐かしい



音響と照明が通常営業仕様へ戻ると、楽屋へ去るかと思われた彼はガウンを再び身につけ、軽やかにステージを降りた

客の前だからか、ぽてぽて歩きは控えているらしい


ステージ上の美しい雰囲気を崩すこと無く、それぞれの席に挨拶をして回っている

それを見ながら特等席を元に戻し、カウンターへ戻った



「お前、やってくれたな」

「なんのことでしょう?」



マスターは平然とした顔で答える

こいつのことだ、俺を手のひらの上に乗せて、弄び、楽しんでいたのだろう

悔しい、腹立たしい、そういう方向の感情はもちろんあるのだが、この気持ちはなんだろう?

形容し難い不思議な気分だ

















つづく