How to fly・34 | 黒チョコの嵐さんと大宮さん妄想書庫

黒チョコの嵐さんと大宮さん妄想書庫

嵐さんが好きです。二宮さんが好きです。大宮さんが好きです。

こちらは妄想書庫でございます。大変な腐りようです。足を踏み入れる方は、お気をつけくださいませ。

※BL妄想書庫です


苦手な方はお気を付けください





















「この金で、お前が、俺を…買うの?」

「違う」



では、封筒を厚く膨らませるこの金にはどんな意味があるというのか



「返したい」



返す?

金なんて貸していない



「あなたはなぜか五万だと思ったみたいだけど、俺は…その、俺はさ、五円のつもりだったんだよね」

「…ご、えん?」

「そう、五円」



開かれた手が、こちらに向けられた

この映像は記憶に残っている

初めての夜の、初めての金額交渉

相場がないと言われ、他の奴等はだいたいこれくらいだと、片手を開いて見せた

可愛らしい小さな手が示した「五」という数字

五千なんて有り得ない、五十万はさすがに高過ぎる


だから、五万


これが一番適切であり、その後も当然のように五万だと思い込んでいた

それが、まさかの



「…五円?!」

「だからこれは預かってた超過分」

「超過分って…いやいや、五円なんてそんな安く売る奴がどこに居んだよっ」

「ここ?」

「まさか他にもそんなふざけた金額提示してちゃり~んなんて五円だけ受け取って抱かれたなんて言うんじゃねーだろうなぁ?!」

「なにー、もー、うるさぁい」

「これが黙ってられるかっ!」

「ラッキー、お買い得、でいいじゃん?」

「いいわけねーだろ!ちゃんと説明しろ!説明しねーなら受け取らねーぞっ!」



これを受け取れば抱き合える、金も返ってくる、ラッキー


そんな馬鹿な道理が通るわけがない

抱く抱かない以前の問題だ

大問題だ



「おい、こら、黙るな、ふて腐れた顔すんなっ 口を動かせっ」



これだからあなたはめんどくさいんだよなー、はー、もー、めんどくさっ

そんな愚痴をいちいち挟みながら渋々明かされる事柄を、こちらは懸命に聞く



「基本的にみんな前払いなんだよねー」

「えっ?」



俺以外は彼と過ごす夜の二回目が無いことはマスターが教えてくれたし、彼もそれを認めていた

しかし、支払いシステムまで違うとは思っていなかった



「まず店に来るじゃん?で、予約するよね?」

「する、俺もした」



ここまでは俺も他の奴等と変わらない



「そこでマスターが見定めてくれるの、客として相応しいかどうか的なことをね、で、値段も決めてくれて、その場でお支払い、予約システムとしては一応そういう流れかな」

「そ、そうだったの?」

「ぐちゃぐちゃ言う人も居たみたいだけど、そーゆー人はその場で追い返されるんだって」

「それもマスターが?」

「そう」



あいつならやりそうだ

仮面を外し、睨み、時には怒鳴り、すごすごと背中を丸めて帰る客の姿が目に浮かぶ



「一晩で最低十万に設定してるって言ってたかなぁ」

「十万…」



いきなり告げられる金額としては大きく感じられる



「お前にすっごく会いたくても足りない人も居ただろうな…」

「そーみたいね」



値下げを要求する奴はもちろんのこと、端から見下している奴、乱暴な行為をしそうな奴、身だしなみが整っていない奴、噂を聞きつけた興味本意な奴

全ては門前払い、容赦なく叩き出したらしい



「でも俺は…」



前払いシステムの説明はされなかった

二回目は呆れた顔はされたが仮面が外されることも、拒否されることも無かった

金額設定があったことも、それが十万であることも、今、初めて聞いた

何も知らなかったとはいえ、俺は、その日の過ごし方によって金を置いていかない夜もあった

それなのに、初めから基本の半額どころか五円のつもりだったと言われても、お買い得だラッキーだ等という言葉では片付けられない

















つづく