How to fly・33 | 黒チョコの嵐さんと大宮さん妄想書庫

黒チョコの嵐さんと大宮さん妄想書庫

嵐さんが好きです。二宮さんが好きです。大宮さんが好きです。

こちらは妄想書庫でございます。大変な腐りようです。足を踏み入れる方は、お気をつけくださいませ。

※BL妄想書庫です


苦手な方はお気を付けください





















「くそっ あと一歩なのに…でもいい!今はこれがベスト、素晴らしい!ありがとう!」

「ありがとうっておかしくない?」

「すごくありがとうな気分だから!ありがとぉー!」



手を差し出す



「はいはい、こちらこそー」



彼も手を差し出した

ぎゅっと握って、ぶんぶんと振る



「これで飛べる!」

「よかったねー」

「お前もだぞ!」

「はいは~い」



手を握るだけでは足りない

この素晴らしい瞬間をもっと強く共感したい



「抱きしめていいっ?!」

「…勢い有りすぎて怖いんですけど」

「抱きしめーる!」

「うわぁーっ」



飛び込むように抱き締めると、勢い余って彼の尻がベッドから落ちそうになった



「お、おちるぅ」



しかし、一緒に転げ落ちて怪我をさせる、という展開にはならない


素晴らしい瞬間に対して気持ちは昂っているが、大切にしたいという想いも同時に大きく膨らんでいるから



「大丈夫っ もっとこう!」



腰に腕を回して、ぐっと引き寄せた

密着度は増し、安全も確保される



「ほらね、大丈夫」

「全然大丈夫じゃなかったじゃんっ」



不満があるような言葉を使ってみても、音色は温かい

四本の腕は、互いの身体にしっかりと巻き付いている




「はぁ…気持ちいい…」



壁の無い抱擁だった

ここが地下で、壁に囲まれていて、窓も無いとはとても思えない

爽やかな草原、暖かい太陽、空や風や草木からも祝福されているような解放感が、ここに、二人に、満ちている



「なぁ」

「んー?」

「お前も気持ちいい?」

「…うん」



素直な返事だった

それは油断していた下半身に直撃する


商売上の行為ではなく、お前を好きな俺が、俺を好きなお前を



「抱きたい」



心と心が触れ合った状態で、それをお互いが承知した上で、真っ正面から裸で



「抱き合いたい」

「…条件が、ある」



背中から腕が離れた



「条件?」



こちらも腕を解く



二人の間に出来た空間は小さい

手を伸ばせばすぐに届く

僅かな不安を覚えるのは、すぐに返事が貰えると安易に考えていたからだ


今の二人の距離ならば断られることはないだろう、すぐに合意が得られるだろうと思っていた



俺は、彼の想いを、甘く見ていた




何かを探しているのか、ベッドの下に手を入れてごそごそと動かしている



「これ」



戻ってきた手には茶封筒が握られている



「これを受け取ってくれるなら」


「これを?」



僅かな不安が導き出した答えは、条件がクリア不可であること

例えば「愛の認識について二万字で語れ」とか、「マスターを倒してから来い」とか、そういう難題が出されるのではないか、つまりは抱き合うことへの遠回しの拒否ではないか?と身構えた



「受け取ればいいの?」

「うん」



しかし、示された条件は至極簡単なもので、今すぐにでもクリア出来てしまう

ということは、拒否ではない?



「もちろんいいけど、中身は?」

「お金」

「…金?」



ここから見るだけでも封筒には厚みが感じられる

仮に中身が全て紙幣だとすると、数十万が入っているかもしれない



商売としての行為ではない営みを望んで「抱きたい」と言ったつもりだった

しかし、俺が金を受け取るということは、商売と変わらないどころか、買われる側の気持ちを味わってみろとでも言いたいのだろうか

















つづく