※BL妄想書庫です
苦手な方はお気を付けください
頭の回転が速い彼にしては、理解するのに時間がかかっていた
何を言っているのか?という困惑から、なぜそんなことを言うのか?という疑問へ
疑問の答えを見付けたのか、何を言ってるのか分かっているのか?と呆れ、分かっていそうだと判断したらしく、また困惑を経てから驚きへ
目まぐるしく感情が入れ替わる
そして、今は
「…怒ってたと思ったのに急に泣いて、また変なこと言って…ばかなの?」
照れている
想いは少なからず伝わったらしい
「もごもご話すの、かわいいな」
「かわいくねーわ!」
「照れ隠しもかわいいし」
「だからっ」
風力は何から得よう?
腕力、知力、財力
どれも自信がない
今その身に持っている物で何か…
「笑力とかどう?」
「しょ…はい?なに?」
「笑う風で一緒に飛ぼうぜっていうお誘いをしてる」
「なにそれ、意味分かんないしっ」
意味が分からないのは俺も同じだ
飛ぶ意味だって飛びたい理由だって分かっていない
でも、なぜだろう、それでも飛べると思えてしまう
「分かんなくてもいいんじゃね?」
「はぁ?」
「飛びたいんだろ?いつか飛ぶんだろ?夢は叶える為にあるんだ、飛べるよ、飛ぼう!」
「あなたほんとになんなの…オチも無い、着地点も無い、全部ボケ倒しといて最後は丸投げとかもう…なんなの?なんなのー?もうほんとに…ワケわかんないっ」
「丸投げしてねーって、一緒に飛ぼうっていうお誘いなんだからさ」
「だからそれが丸投げだって言ってんの!もーほんとにめんどくさいんだからっ」
「それは初対面から何度も言われてるからさすがに自覚してるって、ごめんって、ここは一つめんどくさい俺と飛ぶってことでさ、どう?」
「…ぶはっ もうダメっ この人あほだっ あほすぎるっ くははっ あははははっ」
目の前で笑っている
壁の見えない彼が、とても素直に
「かわいいなぁ」
「ひひひっ ふははははっ」
「お前、かわいーなぁー!」
「あははははっ もうやめてぇー」
笑力で飛ぶ
確かに勢いで言ったことかもしれない
が、あながち間違いではないかもしれない
「好きだよ」
自然に口から漏れていて、言った本人が驚く
「俺も好きかもねー」
返答があったことに驚き、さらにその内容にもっと驚いた
「…今、今!なんて言った?!」
「好きかもねー?」
「おぉ?!マ、マジか!!」
「あなたには負けました」
「負けた?え?何に?」
いきなり勝負の話になってしまった?
愛の告白ではなくて?
「食い入るようにステージ見てたのも、その強い目線にも、無言なのに会話をしてるような気にさせられたのも、強気に押してくるのに素直に謝ったりするのも、妙なことにこだわるのも、ほんとにめんどくさい客なのに二回目も三回目もそのあとも…会いたいとか…はぁー、もういい、認めますよ」
よかった、勝敗に関することではなかった
「つまり、俺を、好きなんだな?」
「かも、ね?」
「そこだけ認めねーのかよっ」
「認めてるよー」
「好きって?!」
「かもって」
惜しい!
つづく