※BL妄想書庫です
苦手な方はお気を付けください
「で、届いたのを早速観たんだけど」
「ちなみに…どんなやつ?」
「えっとね、カメラマンに誘導されて気持ちよくなっちゃっていつの間にか男とやっちゃうやつと、修学旅行で友達とシャワー浴びてたら変な気分になってやっちゃうやつと、偉そうな先輩がパシリにしてた後輩に縛られて気持ちよくされちゃうやつと、それから、頭にパンツ被ったやつが出てきて色んな…」
「はい、もういいです」
「いいの?もっと観たよ?」
「充分です」
「そっか、でね、どれも一生懸命観たんだけどさ、うんともすんとも言わねーの、俺の下半身、ぴくりとも反応しなかった
やっぱあれかな、男女のAVと同じで夢と理想が詰め込まれた願望の世界なのかな、カメラが寄ったタイミングでイク技術はすごいなって思ったけど、どれも演技臭いかんじがした
でも受け側が、あ、受けって分か…」
「分かります」
「だよな、ごめん、で、受け側がお前って置き換えたらピョコーン!だよ、ムクムクとかじゃねーの、一気にピョコーン!
瞬間で血管浮いたからAV止めて、お前を想像してヌいた
これは確定だろって思ったけど、映像だけで判断したらダメかなって思って近くのハッテン場にも行って…」
「ストーップ!」
また止められてしまった
が、それでいい
分かった風に言っていたら何度でも止めて何度でも訂正して欲しい
「ハッテン場に行ったの?!」
「行った、会社の近くにある公園がそうだってネットに書いてあったから」
「ちょ…まさかそこで…」
「行ったのは遅い昼休みだったんだけど、チョー健康的な公園だった
そうだよな、考えてみたら昼から盛るってのもちょっと早いよな
あ、でも、同性の同僚と並んで座ってたからかな、筋肉ムキムキの男に凝視されたけど」
「凝視された?!それでっ?」
「すぐどっかに行っちゃったと思う、よく覚えてない」
「あ、そう…なんだ、びっくりした」
「それよりもそこにお前が居ないことを実感しちゃって胸が焦げて苦しかった、すごく会いたくなった」
あの日のどうしようもない焦燥は、今もはっきりと覚えている
太陽の届かない地下に居るであろう彼に会いたくて、会えたらまたどうしようもない気持ちになって、想いを伝えた日だ
「質問終わり?続けるね」
「…もういいです」
「脳の仕組みについて書いてある本を読んだんだけどさ、同性愛者男性と異性愛者女性の脳が近いって書いてあって、つまり脳は男性を好きな人と女性を好きな人で分けることが出来るみたいなんだけど」
「もういいって」
「そしたらそもそも身体の性差で分けることが愚問に思えてきて、細胞よりもDNAレベルなのかと思って遺伝の本を読んでみたら統計的に昔から一定数存在したらしいんだよね、そうなると子孫を残すことに積極的になれない現実に矛盾が生じてくるから、じゃあ環境かな?って思って本を探して…」
「もういいってば!」
何度か入っていた制止を振り切っていたのは、訂正を目的としたものではないと感じたから
今も、話すこと自体を止めろと言われていると思う
「よくないよ」
認識の程度問題で分かった風から脱却出来るならまだまだ足りない
腹の底から納得してもらえるまで続けたい
「もう分かったからっ」
「曖昧になんとなくわかった風でお前を好きっぽいみたいな受け取り方されたままじゃ嫌だ」
本、映像、ネット、実体験、その他色々と読んで見て聞いて調べた結果、対象が限定的であっても自分がゲイである可能性は高いだろうと思った
自分で出したこの結論を嬉しく思った
好きでいることに、それを伝えることに、小さな自信を持てた
「分かった、分かったから、分かった風じゃないのはよく分かったから!」
「ほんとに?俺はほんとに分かった風じゃない?」
「じゃないよ、分かった風じゃなかった、疑った俺が悪い、ごめん」
でも俺は彼と出会う前まで女に欲情していたし、今も反射と勢いがあれば抱くことも可能だろう
分けるなら、後天的なゲイに分類される
もし彼が先天的なゲイであるなら、俺とは全く違う苦悩や困難、あってはならないと強く思うが、差別、などもあったのかもしれない
「…ごめん、お前が謝る必要ない
意固地になりかけてた、こっちこそ、ごめん
マイノリティであることを打ち明けるのはすごく勇気がいるってこともちゃんと分かってたのにぺらぺら語ってた、ごめんなさい」
「もういーよ」
「でも…」
「俺にもあなたに対して偏見があったし、バレた後にそんな反応されたの初めてだったから、なんか…ちょっと面白かったし」
「…そっか」
これ以外の反応というものを想像出来ないが、面白がってもらえたならよかった
つづく