※ＢＬ妄想書庫です
苦手な方はお気を付けください
「…噛み合わないな」
真剣に聞いて、真剣に答えていたのに
「ごめん、俺も噛み合ってないかもって思ってた」
どこが噛み合わないのだろう？
「一応聞きますけど」
「うん」
「ゲイって分かります？」
「分かる」
「即答…あー、そっか、単語は認識されつつあるもんね」
「単語だけ知ってて分かるって言ったんじゃないよ」
「はいはい」
「勉強したから」
「勉強？」
「お前を抱きたくて、けど勢いだけで失敗して、やり方とマナーを勉強した時一緒に」
勉強は今も苦手だけど、この時だけは違った
集中力がどこまでも持続した
「…バレてたんだ」
「いや、お前がどうこうってゆーより…」
「なんだー、溜めに溜めて世紀の大告白みたいにしちゃったー、バカみたーい」
「バカみたいじゃねーよ、ふざけたこと言うな」
とても大切なことを、大切だけど、大切だから、言うにはとても勇気が必要なことを話してくれたと思っている
それを「バカみたい」で済まそうとするな
「男相手に売りやってればそりゃそう思うよねぇ、あはは」
「笑うんじゃねー」
「だってピエロじゃん」
「どこが？噛み合わなくて申し訳なかったけど真剣に聞いてる、ちゃんと受け止めたいと思ってる、ピエロじゃないし、笑うとこなんて一つも無い」
「だって…知ってたんでしょ」
「だから違う、お前がどうこうじゃなくて、お前に爆発的に欲情した俺がそうかもって思ったから調べたんだよ」
「あなたはゲイじゃないよ」
「なんで」
「なんでって…男を抱くの初めてって言ってたし、女性抱けるよね？」
「抱こうと思えば抱けるかもね」
「ほら」
「でもお前に欲情した時点で純粋なノンケじゃないだろ、あ、ノンケって分かる？」
「分かるわっ！こっちは当事者なんだからっ あー、ほんとに噛み合わねーなー」
「俺も当事者だよ」
「どこが？ちょこっと男抱いたからって分かった風なこと言わないでよ」
…分かった風？
ちょこっとの認識で、ちょこっとの興味で、ちょこっと好きっぽいから、ちょこっと抱いてみた
そう思われてるのか
なるほど
悔しい事項もあるが、女を抱ける俺が言うには説得力に欠けていることも分かる
まずは認識問題から改善したい
浅いのか、狭いのか、そもそも間違えているのか、そこから確かめる
「分かった風なこと言ってたら訂正して」
「は？訂正？」
「どれだけ細かく分けても個人差があるってことが大前提だから、正解も不正解もないってのが俺の結論になっちゃったんだけど」
「だから、何を訂正させたいわけ？」
「身体が男性、心が男性、恋愛対象が男性の人、同性愛者の男性が日本ではゲイって呼ばれることが多いよな？」
「今さら当たり前なこと言われても訂正もなにもありませんけど」
「身体が女性でもゲイになりえるけどそれは多分トランスジェンダーかなと思う、そういう区分けがまだ分からない
だから俺限定の話をする
身体と心が男、恋愛対象がお前、ここが重要、お前限定ってところが俺のゲイとしての個性だと思う」
「ゲイの個性って言われても…」
「そう、個人差があることを個性って言う以上、それは人間の個性とも言えて、ゲイとかノンケとかに分けるのはどうなんだろうって思った、けど、この大歓迎の個性を持てたことは嬉しいから確実さを求める為に男と男のＡＶみたいなのを観たんだけどさ」
「え？見たの？」
「観たよ」
「わざわざ借りて？」
「買って」
「買って？！」
「そう、ネットで」
初めは借りようと思っていた
出来るだけたくさんのタイプとパターンを学びたかったから、大手のレンタルショップを何軒も回って探した
だけど、どこにもそれらしき物が置いて無かった
彼も世間の認識がどうとか言っていたけど、男が男に惚れること、さらにその営みを楽しむ為や学ぶ為に鑑賞することは、まだまだ少数派だということを実感した
つづく