※BL妄想日記です
苦手な方はお気をつけください。
こんな嬉しそうな笑顔で話される潤様を久しぶりに見る
…どうしよう、言い出せない
早く伝えないと駄目なのに
「そういえば、お前のとこの旦那様、約束の儀を交わしたんだって?」
「…えっ?」
「うちから祝いの品を贈ったって聞いたからさ」
「そう…そのことなんですけど!」
今だ!その相手が俺であることを言う好機だ!
「旦那様は俺と…」
「大丈夫だよ!
カズの居場所はここにあるから
そんな不安そうな顔するなっ」
「あ…」
あぁ…なんで言えないんだろう
一日、一日と、時は過ぎて
潤様と俺の、約束の儀の日取りが決まろうとする時がやってきてしまった
「雨だ…」
せめてあの青い空が見守ってくれていたら
旦那様を近くに感じられたのにな…
「潤様」
「ん~?」
「…お話が、ございます」
「おぅ、なに?」
「…約束の儀のことで」
「あぁ、な!そうだよなっ なんて言うんだろ?この胸が浮わつく感じ
いつかな~、俺は今すぐでもいいんだけど、周りがうるさいんだよ」
言わないと…
「…大変…有り難く、勿体無いことだと、思っておりますが…」
「どうした?」
今、言わないと…
「私が仕えます屋敷の旦那様と…
約束の儀を、交わしました」
「は?誰が?」
「私が、でございます」
「……え?」
「今の今まで言い出すことが出来ず…申し訳ございませんっ」
嬉しそうな潤様のお顔を曇らせたくなくて
必要とされた自分を手離すことが出来なくて
こんな間際まで、言い出せなかった
「そうか」
「…はい」
「契りは、もう結んだのか?」
「いいえ」
「結ぶのか?」
「…はい」
「…そうか」
潤様のお気持ちが萎んでいくのが見える
「…申し訳ございません」
雨が地面を強く打っている
誰が泣いているんだろう…?
「ただ今帰りました…」
潤様を傷付けてしまった
俺ごときが…
なんで…俺なんかが…
「和也っ 傘はどうした?!」
門をくぐると、軒下から旦那様の声が聞こえた
「…旦那様」
「すぐ温かい湯に…」
「旦那様っ」
俺なんか泣く資格もないのに
心臓がズキズキ痛くて…
旦那様の胸に、飛び込んでいた
つづく