忘れないよ (3) | 完ぺきなママより幸せなママでありたいあなたへ

完ぺきなママより幸せなママでありたいあなたへ

宮城県多賀城市で、子育て中のママへ心理セラピーと心理学講座を開講しているリバティライフです。子育てや生きづらさの悩みを改善する心理セラピー、人生を楽に楽しく変化できる各種心理学講座、対人恐怖解消セラピー、高度ヒーリングセッションなどをご提供しています
 

10分もたたずに、


実家に救急車が到着した。


居間に敷かれた担架に横たわると、


次の瞬間、


パン!と私の中で音がして(母に後日たずねたところ、まわりには聞こえなかったらしい。)


バシャッと破水してしまった。


『タオルお願いします!』


『破水しました!すぐに病院に運びます!』


救急隊員がバタバタと動く中、


私は痛む腹を抱え、


ノンを呼んだ。


『ノン!』


ノンは不安そうな表情でカーテンにしがみついていた。


私はノンに片手を伸ばすと、


ノンはその手に頭をそっと突っ込んできた。


『大丈夫だよ、ママはすぐに帰ってくるからね。』


ノンは静かにうなづいた。


『ばーちゃん、悪い…ノンを頼むね。』


不安そうに佇む二人に見送られ、


私は救急車で搬送された。


救急車の中では隊員の方が、


『大丈夫ですよ、お母さん!先生が必ず助けてくれますから!』


と、何度も励ましてくれた。


単純で無知な私はすっかり安心してしまった。


「そうか…先生ならなんとかできるんだ…」



私は事の重大さに、


少しも気づいていなかった。






病院に着くと、直ぐ様産婦人科に運ばれた。


救急隊員が先生に状況を説明する。


それを聞いていた先生は、


次第に口調が重くなっていった。





診察室に運ばれ、


一通り診察を終えると、


先生はカーテン越しに重い口を開いた。





『…………大変申し上げにくいんですが………』





『恐らく、細菌に感染されたのではないかと思われます………』





『すでに破水してしまっているので、放っておいても、24時間以内には産まれてくると思います………』





『産まれなかったとしても、母体を守るために、取り出してあげなきゃいけないんです………』





『……けれど、まだ六ヶ月ですから……赤ちゃんが産まれてくるには小さすぎて………生きていけないんです………』











…………………え………?



じゃあ、



じゃあ、私の赤ちゃんは?



今お腹の中で、



生きている、



私の赤ちゃんはどうなるの………?





『先生………じゃあ、赤ちゃん………は』





先生は医師として、



私の問いに答えなければならなかった。





『…あきらめるしか、ないんです………。』





涙が、





スーーーっと、





流れて落ちた。





頭が追いつかない。



受けとめられない。



ウソだ、ウソだ、



こんなのウソだ……………









だって、



この子はまだ、



生きてるよ、



私のお腹の中で、



生きてるんだよ………










『…じゃあ、この部屋で少し休んでいてください。今、ご主人に連絡しましたから………』



看護婦さんに案内されたのは、



六畳ほどの畳の部屋。



言われるがままに、



敷かれていた布団に横たわり、



ただじっと、



天井を見つめていた。



口はぽかんと開いたまま、



頬はぴくりとも動かず、



ただ涙だけが、



流れ続けていた。













神様…………





いるなら、





この子を守ってよ………





私はどうなったっていいよ、





本当にいるなら、





この子の命を、





救ってよ…………!!







ねぇ、






神様………………!!















(続編へ)