忘れないよ (4) | 完ぺきなママより幸せなママでありたいあなたへ

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私が部屋で一人、


放心状態の中、


何分たったかわからないが、



廊下で話し声が聞こえた。



聞き覚えのある声…



看護婦さんと話している、あれは…



夫の声だ……!





『…………そうですか……はい、はい……わかりました。』





足音が近づき、



部屋の扉が開く。



それと同時に、



私はハッと、


我にかえって、



こらえきれないほどの感情が込み上げてきた。



『……ママ、大丈夫か……?』



夫はゆっくりと部屋に入り、


私の隣に座った。



夫の顔を見たとたん、



私は色んな感情が、



一気に溢れた。





『……パパっ…………ゴメン!…赤ちゃん、ダメだってっ………っ!』










それ以上、



なにも話せなくなった。





『………いいよ、気にすんなよ……ママのせいじゃないよ。』





夫は私の頭を撫でながらそう言った。






私は夫の腕にしがみつき、



狂ったように泣いた。











その時、


ふっと頭に、


ノンの顔がよぎった。


なんとか自分を落ち着かせ、



『………ノンの様子を見て来てくれる?』



と頼んだ。



『……ああ、わかった。ばーちゃんにも説明してくる。そのあと、すぐまたここに戻って来るから。』



夫はそう言うと、



静かに部屋を出ていった。





夫と入れ替わって看護婦さんが部屋をノックした。



『病室の用意ができましたから、行きましょうか。』



そうか………



入院になるのか………



私が部屋を出るとそとには先生がいた。



先生は静かに話始めた。



『……たまにいらっしゃるんですよ。検診もずっと順調できていながら、急に産まれてしまう方……』



『……そうなんですか……』



『…月の満ち欠けに関係があるという説もあります………今日は満月だそうですよ。』



私は先生の話をぼんやりと聞いていた。





その後、


看護婦さんに案内され病室に向かった。



『……ごめんなさいね、こういうケースでは、一人部屋にするんですが、今日はあいにく部屋が空いてなくて、二人部屋なんですよ………でも、同室の方も、同じように死産された方なので…………』



看護婦さんは申し訳なさそうに言った。


『……いえ、大丈夫です……』


私はそれだけ答え、


病室に入り、


隣の方と会釈だけして、


自分のベッドに座った。



『陣痛や出血など、なにかあったらすぐにナースコールしてくださいね。』



看護婦さんはそう言うと、


そっと病室から出ていった。





私のベッドは窓際で、


外の駐車場がよく見えた。


私が運ばれたのは昼過ぎだったのに、


外はいつのまにか夕方になっていた。


うっすらと、


綺麗な夕焼けが見えた。





しばらくして、


我が家の車が駐車場に入ってきた。


夫がノンを連れてきたのだ。



『ノン!』



病室に入ってきたノンに声をかけると、


ノンは私の胸に飛び込んで、

真っ赤な顔をして泣き出した。



『うわぁ~ん!ママ!死なないで!』



救急車で運ばれてた私を目の当たりにしたノンは、


私が思っている以上に、


そうとうな不安を抱えていた。


私はノンを抱きしめて、



『大丈夫だよ。ママは死んだりしないよ。』



と言って、笑って見せた。



『………本当?』


『本当だよ。約束する!』



ノンはその言葉に安心したのか、


にっこりと笑った。




『見て、ママ!お空キレイだよ!』







三人で雑談するのが、


なぜだかすごく久し振りに感じた。



『……パパ………』


『ん?』


『私、ノンの顔見たらさ………笑顔になれたよ。』




『……だろ?俺もさっきばーちゃんちに行った時に、ノンの顔を見たとたん、笑えたんだ。だからママにも会わせなきゃって思ったんだ。』




私たちはノンに救われているんだ……



ノンの笑顔に。



ノンの存在に。





無邪気に笑うノンの姿を見て、



心から申し訳なく思った。





ノン、ごめんね……





パパ、ごめんね……





私、





赤ちゃん守れなかったよ……











(まだ終わらない。)